反旗を翻した姉に頭を痛めるフィリピン大統領、ドゥテルテ逮捕でマルコス一家にも深い亀裂

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この3年を振り返ると、政権運営に圧倒的な影響力を見せてきたのはリザ氏だ。公然と罵り合う仇敵となったサラ氏や小姑であるアイミー氏はもとより、閣僚や側近ら以上に大統領に直接働きかける強い力を持っているようにみえる。それは「夫婦独裁」と呼ばれたシニアとイメルダ氏の関係をも彷彿とさせる。

イメルダ氏は、ボンボン氏の大統領就任に際して「私は夫と息子という2人の大統領を持つことになった。世界で一番幸せ」と語ったが、その後、発言はほとんど聞こえてこない。家長であるイメルダ氏の衰えが一家の亀裂の修復をむずかしくしているのではないか。

ドゥテルテ派の信頼を勝ち得るか?

アイミー氏はドゥテルテ陣営から全幅の信頼を寄せられていたわけではない。両陣営の板挟みとなって態度をなかなかはっきりさせなかったこともあり、マルコス陣営の「トロイの木馬」と見る向きもあった。

上院選の情勢調査では前大統領の逮捕以来、ドゥテルテ陣営の各候補が同情票を集めて大きく支持率を伸ばしているなかで、アイミー氏はいまだに12人の当選圏に入っておらず、13~14位あたりで低迷している。「マルコス」という名に忌避感のあるドゥテルテ支持者は多い。そんななかでサラ氏が明確に支持を打ち出したことが再選につながるかどうか。

上院議員はサラ氏の弾劾裁判で裁判官を務める。弁が立ちマルコス陣営の内情を知るアイミー氏が当選すれば、政権にとっては次期大統領選へ向けた政局のカギを握るやっかいな存在になるだろう。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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