反旗を翻した姉に頭を痛めるフィリピン大統領、ドゥテルテ逮捕でマルコス一家にも深い亀裂

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国外追放の直前、「もうここには戻ってこられない」と嘆き悲しむイメルダ氏とともにベッドに横たわり、「帰ってくるよ、僕らは帰ってくるよ」と若き日のボンボン氏が繰り返すシーンについて「オイディプスのようだ」と評した。

アイミー氏の視点に貫かれた映画には多分に誇張があるにしろ、しっかりものの姉とおっとりして頼りなげな弟という2人の性格描写に違和感を抱く人は多くないだろう。

オカンポ氏が発掘したシニアの日記の中に、ボンボン氏について「気ままで怠惰(carefree and lazy)」と評し、心配していたというくだりがある。

1970年3月15日付の日記には「イメルダは、学業そっちのけで遊んでばかりいるボンボンを制御できておらず、私たち夫婦に災難が降りかかったと感じている。ボンボンは2日間宿題をせず、2人の友人と一緒に起きていた。私は彼の友人を宮殿から追い出すと警告した。ボンボンにはまだ意志の強さが備わっていない」との記述がある。

一方、同年4月20日の日記ではアイミー氏が学校で優秀な成績を残したことを誇り、「彼女が男だったらよかったのに」と嘆息している。

イメルダ氏を彷彿、リザ夫人の影響力

姉弟の関係は幼少期から微妙なものだったと想像できるにしろ、当時の彼らの姿を現在に投影させることはフェアでないだろう。

実際に姉弟が公の場で批判しあうことはない。アイミー氏は政権を批判しても大統領を名指しすることはなく、ボンボン氏も姉の反逆に強いコメントはしていない。

それでも姉の心の底に弟を軽くみる心情があり、それが政権に対しても遠慮なく物言う姿勢につながっていても不思議はない。政権奪取という目標を達成した弟から見れば、口うるさい姉は次第に疎ましい存在になっていたのかもしれない。

私はボンボン氏の大統領就任前の2022年5月、政権運営のカギを握るのは4人の女性と書いた(「復活したマルコス一族によるフィリピンの将来」)。サラ氏、アロヨ氏、アイミー氏、それにボンボン氏のルイーズ(リザ)夫人だ。

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