好かれっぷりは「第2の安倍晋三」、トランプ関税の対立解消へ欧州で高まる《イタリア女性首相》への期待

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メローニ首相との会談後、トランプ大統領は「EUの関税について合意の可能性は100%だ」とポジティブな見通しを示した一方、「それは公正な協定になる」と付け加えた。メローニ首相は貿易不均衡や防衛費負担問題でEUから交渉を負託されたわけではないが、トランプ大統領との良好な関係を相互に確認できたことは大きな成果だったといえる。

イタリアは現在、防衛費が対国内総生産(GDP)比で1.49%となっており、NATOの目標に達していない同盟8カ国のうちの1つだ。メローニ氏は6月のNATO会議で、イタリアはGDPの2%を防衛費に充てるというNATOの要件を満たすことができると表明する予定だ。

メローニ首相が「ウクライナ問題については姿勢を変えず、EU首脳とイタリアで会談するよう、トランプ大統領を説得した」ことを、イタリアの野党指導者であるカルロ・カレンダ氏も成果として評価している。

会談後、メローニ首相は、対米外交は貿易不均衡の是正と防衛費増額に集約されると認識していると述べた。その意味で、対米交渉のEUとの橋渡し役を成功させたといえる。

現実路線の政治が流れを変える?

EUが頭を痛めているのは、トランプ氏が「EUはアメリカをだまし、アメリカに莫大な支出をさせてきた」という批判を繰り返している点だ。この誤解の修正ができるかが今後のカギを握る。

極右勢力が台頭するEU域内で極右への嫌悪感は根強いが、脱グローバル化の中で国益重視の方向性は強まる一方だ。メローニ首相はイタリアの右派を束ねながらも、トランプ大統領と同様、現実路線の政治を展開している点で、対米交渉での期待が高まっている。

一度は中国の広域経済圏構想「一帯一路」に傾いたイタリアだが、中国との貿易戦争が主戦場のトランプ政権に接近する今、これ以上の中国への接近は得策ではないとして、メローニ首相は中国と距離を置いている。日本は政治と経済を分離して考えているが、世界は今、政治と経済が切っても切れない関係に接近している。日本も選択を迫られている。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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