好かれっぷりは「第2の安倍晋三」、トランプ関税の対立解消へ欧州で高まる《イタリア女性首相》への期待

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あまりイデオロギー的な発言をしないトランプ大統領だが、実はキリスト教保守派の価値観を明確に持っており、左派リベラルの匂いには極めて敏感だ。メローニ首相はバイデン前政権が強化した環境対策やDEIプログラムだけでなく、人道支援活動に巣くう偽善への嫌悪にも共感を示している。

メローニ首相は会談の冒頭、トランプ大統領と意見が一致していることを明確にする必要があった。彼女はトランプ大統領の「アメリカを再び偉大にする」になぞらえ、自身の目標を「西洋を再び偉大にする」ことだと述べた。

そのうえで、トランプ大統領が掲げる「われわれの歴史を消し去ろうとする『WOKE(ウォーク、意識が高い人たち)』への蔑視や『DEI(多様性・公平性・包摂性)』のイデオロギーとの戦いを支持する」とすり寄った。ヴァンス副大統領が批判する左派リベラルの強い欧州に位置するイタリアの首相が、トランプ政権の基本理念に共感した効果は大きかった。

イタリアにとって比重の大きい対米貿易

英国がEUを離脱して以来、イタリアはEU第3位の経済大国に浮上した。メローニ首相が背負った重荷は、すでにアメリカが輸入する大半の品目に10%の追加関税が課された後の首脳会談ということであり、トランプ大統領を怒らせるような上から目線の関税政策への批判は良好な関係を崩すリスクもあった。

イタリアは欧州有数の自動車産業の集積地だ。ステランティス傘下のフィアットやアルファ ロメオ、マセラティのほかに、スーパーカーの製造で知られるフェラーリやランボルギーニがある。フェラーリは全車両をイタリア国内で生産しており、2024年のアメリカへの輸出は3452台と、販売台数全体の25%を占めた。

アメリカへの輸出品は自動車だけではない。繊維・衣料品・皮革製品・高級バッグなどのファッション製品、化学製品、ワイン・チーズ・ハムなどの農畜産物に加えて、大きな比重を占めるのが国際的な競争力を持つ機械だ。

イタリア国立統計研究所(ISTAT)の最新の分析では、2024年のイタリアからの輸出の48%以上がEU圏外に向けられている。輸出先別の比率では、ドイツ、フランス、スペインに次いで、アメリカは4番目の大きさだ。

メローニ首相は会談中、自らの政権がインフレを抑え、雇用を改善したと強調。トランプ大統領に向かって満面の笑みで「自分の国を宣伝することを許してほしい。あなたはビジネスマンだから、私の気持ちがわかるだろう」と述べ、トランプ大統領も笑顔で応じた。

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