好かれっぷりは「第2の安倍晋三」、トランプ関税の対立解消へ欧州で高まる《イタリア女性首相》への期待
一方、トランプ大統領は会談中、メローニ氏の首相としての働きぶりから、イタリア語の響きの美しさまで称賛を繰り返した。移民問題に関するメローニ首相の強硬姿勢も称え、「もっと多くの政治家がメローニ首相のようならいいのに」と述べた。メローニ首相は域内3番目の経済大国がEUを変えつつあると述べ、イタリアの存在感に自信を示した。
メローニ首相が果たした欧州との橋渡し役
メローニ首相は訪米する前、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長と意見交換したが、EU内にメローニ首相への全幅の信頼があったわけではない。EUとしてはトランプ追加関税阻止の毅然とした姿勢を示してほしい一方、メローニ首相にとってはトランプ大統領との信頼関係構築とイタリアの国益維持が至上命題だった。
EUは27の加盟国で構成され、貿易交渉や防衛交渉で意見を一致させるのは容易でない。また、メローニ首相はEUから交渉を負託されたわけでもない。彼女はこの点をわきまえ、EU代表でもなく、イタリアの国益だけを強調しすぎる姿勢も見せず、トランプ大統領を欧州に誘い込むことに成功した。
トランプ氏の大統領就任以降、アメリカとEUはここ数十年間で最悪の関係にある。とくに2月14日のミュンヘンでの安全保障会議で、J・D・ヴァンス副大統領が、欧州大陸が直面する最大の脅威はロシアや中国ではなく「(欧州)内部から」来るものだと、欧州のリベラル化した民主主義を痛烈に批判して以来、米欧関係は氷河期に入っている。
そもそも、トランプ大統領とEUの関係は第1次政権時から芳しくない。ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)は北大西洋条約機構(NATO)の防衛費負担などをめぐりトランプ大統領と対立する場面が目立ち、相性は最悪だった。
2019年のフランス・ビアリッツでの主要7カ国首脳会議(G7)では、トランプ大統領の「アメリカ第一主義」を真正面から批判。原則を大切にするドイツをトランプ大統領は嫌った。
2期目に入ったEU執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長もドイツ人で、トランプ関税に対する報復関税を準備中だ。追加関税はドイツの自動車メーカーに大きなダメージを与えるためだ。
規則遵守のメルケル氏の弟子、フォンデアライエン委員長には、まともにトランプ大統領との関係を構築しようという動きは見られない。むしろ、トランプ大統領が制裁措置を取れば欧州は報復する計画があると警告している。
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