改善が急務 「老老介護」で直面する5つの"高い壁" 共倒れを避けるには「介護者のケア」にも目を向けて
70代という高齢でありながら、体力的にも精神的にも限界が近づいている。腰痛や膝の痛みに悩まされ、自身の健康も不安視しているが、休む暇もない。
「介護サービスを利用したいが、費用が心配だ」
そう木村さんは何度か語っていた。介護保険制度を活用すれば、訪問介護やデイサービスを利用できるが、自己負担額が家計を圧迫する。
厚労省の「令和3年度介護給付費等実態統計」によれば、介護サービス利用者の自己負担額は平均で月額約2万円。この金額は、年金収入のみで生活する木村さんにとって大きな負担となっていた。
経済的な問題は、積み重なると大きな出費となる。介護用品や医療費についても同様だ。紙おむつの購入や介護用ベッド、車椅子などのレンタルには費用がかかる。これらの費用は介護保険で一部補助されるが、それでも自己負担が生じる。
木村さんが言う。
「毎月の出費が増えれば、貯金も底をつく。そう考えると不安になります」
情報不足、孤立化、ストレス…そして「共倒れ」
2つ目の問題は情報の不足だ。木村さんは、どのような支援制度が利用できるのか詳しく知らなかったと振り返った。市役所へ相談に行っても、専門用語が多く、手続きも複雑で理解しづらいという。
「もっとわかりやすく説明してもらえれば助かるのに」
と木村さんは困惑していた。情報が不足しているために、利用可能なサービスを活用できず、結果的に介護者の負担が増している現実がある。
例えば、「ケアマネジャー」という言葉を聞いても、それが何をしてくれる人なのかピンとこない高齢者も多い。
ケアマネジャーとは、介護サービスを受けるための計画を立て、適切なサービスを調整してくれる専門職である。しかし、その存在を知らなければ、相談することもできない。
さらに、助けを求めることに対する心理的な抵抗も問題である。木村さんは「家族のことは自分で何とかしなければ」と思い込み、誰にも相談できずにいた。
しかし、無理がたたって自身も体調を崩し、介護される妻も適切なケアを受けられなくなってしまった。このような状況は、老老介護における大きな落とし穴である。
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