改善が急務 「老老介護」で直面する5つの"高い壁" 共倒れを避けるには「介護者のケア」にも目を向けて

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3つ目の問題が、地域のつながりの希薄さだ。かつては隣近所で助け合う文化があったが、高齢化が進むにつれ、周囲の人々も自分たちの生活で精一杯になっていく。とくにそうした傾向は都心部に多い。

「誰にも頼れず、自分たちだけで何とかしなければならない」

孤独を感じたと木村さんは言うが、同じ思いをしているのは彼だけではないだろう。地域の支援が得られないなか、介護の負担を夫婦だけで抱え込むしかない現状を目の当たりにする人は多いはずだ。

精神的なストレスが4つ目の問題だ。木村さんは認知症を患う妻の介護において、突然の怒りや暴言に悩まされていた。

「何度も同じことを聞かれ、怒鳴られると心が折れそうになります」と木村さんは語っていた。認知症の症状に対する理解が不十分なまま介護を続けることは、介護者の精神的な負担を大きくしていたのだ。

そして5つ目が、介護者自身の健康問題だ。木村さんは腰痛や高血圧といった自身の持病が悪化しつつあるが、病院に行く時間も取れない。「自分が倒れたら妻はどうなるのか」と不安を抱えながらも、無理を重ねている。

介護者が健康を損なえば、介護される側も適切なケアを受けられなくなる。老老介護で最も危険なのが、このような「共倒れ」のリスクがあるということだろう。

介護は「社会全体」で支えるべき課題

では、こうした老老介護の問題に対して、どのような解決策があるのだろうか。

一般的にいわれているのが、行政や地域社会による支援の強化だ。例えば、「包括」と呼ばれる地域包括支援センターを活用し、高齢者が孤立しない環境をつくることが重要である。

包括とは、高齢者の介護や生活支援について総合的に相談できる窓口であり、専門の職員が対応してくれる。本人や家族が、包括を頼るのは1つの方法といえる。

また、介護者自身が助けを求めやすい環境づくりも必要だろう。介護者同士やサポートグループによる交流会の開催など、情報共有や悩みを打ち明ける場を提供することで、孤立感を軽減できる。木村さんも地域の介護者サロンに参加し、「同じ境遇の人と話すことで気持ちが楽になった」と感じているそうだ。

だが、実際はそう簡単なことではない。木村さんのように地域活動に参加できればよいほうで、包括を活用するといっても、何を相談したらいいのかもわからないという高齢者がいるのも事実だ。

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