まさかのトランプ関税の一部「90日間停止」だが…高関税をかけたがる背景事情

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実は、これまでアメリカは歴史的に輸入関税を低くして、貿易を活発にさせる自由貿易(フリートレード)を推進してきました。アップルやコカ・コーラなどアメリカの大企業はグローバル展開をしているため、世界的に輸出しやすいことがメリットとなるからです。また貿易を活発化させてアメリカ依存への経済的な結びつきが強まれば、軍事戦略面のつながりが強まると考えてきたからです。

しかし、安い外国の輸入製品に押されてアメリカ国内の産業は、製造業中心に縮小して、雇用も失われてきました。これに対してトランプ氏は自由貿易(フリートレード)から離れて、貿易収支の均衡という観点での公平貿易(フェアトレード)に整合する考えを主張しています。

関税戦争を引き起こした失敗例

歴史的に関税戦争を引き起こした失敗例として、1930年にアメリカで制定されたスムート・ホーリー関税法の教訓があります。1929年に起こった世界恐慌で傷んだ経済を立て直すため、アメリカは平均関税率が59.1%となる高関税をかけて自国産業を守ろうとしました。

しかし、各国も報復関税を導入したことで、さらに世界的な貿易の縮小、輸出不振による不況が進みました。ドイツなどの国は不況から抜け出すために軍備拡張による需要創出をしたため、これが第2次世界大戦の大きな要因となりました。

このような歴史の教科書で失敗とされる関税戦争への発展はトランプ氏も望んでいないことは、トランプ氏が各国間で貿易交渉する意向を示していることからもわかります。

今後、相互関税が停止された90日間で実際の貿易交渉の内容がどうなるかが焦点となるでしょう。具体的に考えられる内容として、わが国の規制緩和、日本企業のアメリカ現地生産の推進、円高・ドル安誘導など考えられます。

また1981年には自動車のアメリカへの輸出の自主輸出規制を実施した歴史もあることから、同じような輸出自主規制の可能性もあります。これらの政策はわが国の景気や企業に少なからずマイナスの影響を与えるでしょう。

しかし、トランプ関税の行方が読めない不安が足元までの下げ相場の主因となっています。今後、交渉が具体化に向かい、少なくとも不透明感が後退に向かえば、株式相場は反発トレンドに移行するとみています。

吉野 貴晶 青山学院大学大学院 青山ビジネススクール 客員教授

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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