なぜ「完全メシ」は売れるのか? 栄養バランスがいいだけじゃない、消費者の「失敗したくない」心理をうまく利用した"好事例"

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日清食品株式会社が販売する「完全メシ」は、日本人の食事摂取基準で設定された33種類の栄養素とおいしさのバランスを追求したブランドです。

日清食品の最新フードテクノロジーを駆使することで、たんぱく質、脂質、炭水化物の三大栄養素のほか、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸もバランスよく整え、さらに、栄養素独特の苦みやエグみを抑えて、普段の食事と変わらないおいしさを実現しています。レンジでチンしたり、お湯を注いだりと、作り方も非常に簡単です。

個人レベルではコントロールするのが難しい栄養素のバランスが整えられ、おいしさも兼ね備えているという点で非常に新奇性が高く、2022年5月末の登場から既に累計3600万食(2024年12月31日時点)を超えるスマッシュヒットを記録しています。

当初はカップ麺などの常温商品から販売が始まりましたが、現在ではラインアップが拡がり、オンラインストアで注文すると自宅に届く冷凍食品の『冷凍完全メシDELI』なども展開されています。

さらに、2024年には、オフィスで「冷凍完全メシDELI」がいつでも購入できる常設タイプのスタンド型社食「完全メシスタンド」や、女性に向けて開発された忙しい朝にぴったりの「冷凍完全メシDELIおにぎり」など、商品カテゴリーが更に拡張しています。

圧倒的な機能価値がある「完全メシ」

特に、全国のスーパーに並ぶ常温の『完全メシ』は損失回避のツボの中の「品質で間違いないものを選びたい」という生活者の気持ちを押さえています。

「完全メシ」には「栄養素のバランスが整っていて、ウマくて、しかも手軽という圧倒的な機能価値」があります。“完全栄養食”をうたっている商品は市場に登場していますが、「完全メシ」ほど拡がっているものはほとんどありません。

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多くの生活者の中に「健康を謳う商品は味がイマイチ」という認識がありますが、他のブランドと「完全メシ」には“既存ブランドの活用”という大きな違いがあります。

「完全メシ」は既存ブランド(「日清焼そばU.F.O.」や「日清カレーメシ」など)を活用することで、生活者は「既存の日清食品の商品は信頼できるから、健康を謳っていてもおいしいに違いない」と最初から安心して購入できるのです。

加えて、直近(2025年1月現在)のブランドコミュニケーションでは日清食品の代表ブランド「カップヌードル」と「完全メシ」を比較して、「栄養バランスが整ってる。しかもうまい。そりゃ『カップヌードル』よりこっちだろ」と言い切る訴求をしています。比較対象を作ることで「品質の間違いのなさ」を演出できている好事例です。

博報堂買物研究所 研究所

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はくほうどうかいものけんきゅうじょ / Hakuhoudo Kaimono Kenkyujo

2003年設立。「買物」を軸として20年にわたり、ショッパーマーケティング領域における研究開発・情報発信・ソリューションを提供している。『企業の「売る」を「買う」から考える』をフィロソフィーに、買物現場の真実に着目し、買物客の本音・買物のツボである「買物インサイト」を起点に、買物欲を満たす「買物シナリオ」を創造し、新しい買物を生み出すソリューションを提案・実行する実践的研究所。

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