日本は自動運転「負け組」か?「ビジネスの勝ち負け」では論じられない自動運転のリアル

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話を塩尻市でのシンポジウムに戻そう。ここで気になったポイントは、大きく3点だ。

1点目は、「導入や運用にかかるコスト」。車両の量産効果がまだ大きくないため、導入時のコストが高く、地方自治体は国の補助金に頼っている状況だ。

運用コストについては、乗車賃金による収入は限定的であり、多くの場合、地域企業の広告に頼ることになるが、それも多くは見込めない。

だからこそ、ドライバーレス(無人運転化)による人件費削減はもとより、遠隔操作による集中管理方式にすることで、トータルコストの削減が必要だ。

シンポジウムの様子。自動運転の関係者、約200人が集まった(筆者撮影)
シンポジウムの様子。自動運転の関係者、約200人が集まった(筆者撮影)

また、一般に自動運転より低コストだとされるAIオンデマンド交通も、事業者によって多少の差はあるが「コストはそれなりにかかる」といわれている。

いずれにしても、地方自治体が「地域生活のためのセーフティネット」という観点で公費で支えることになる。

そのためには、地域の公共交通を再編する「リ・デザイン」を明確化し、地域住民に対して自動運転のコスパをしっかり説明するべきだろう。こうした従来の考え方に、大きな変化はないように思う。

急ブレーキで乗員の安全や快適性は?

2点目は「リスク」だ。もしもの場合の補償としては、保険大手会社による自動運転向け保険が商品化されており、事業運営者と自動運転車の利用者、また公道で混走する一般自動車の利用者など、それぞれへの配慮は行われている。

そのうえで今回話題にのぼったのは、急ブレーキ等での乗員の安全性の確保だ。言い方を変えると、「乗り心地」の改善である。

人が運転するより、自動運転のほうが事故に遭遇しにくいという技術的な見解の中で、衝突のリスク回避と、車内での乗り心地のバランスについて、快適なサービスという観点で今後さらなる議論が必要であろう。

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