"処方箋ナシ"で「病院の薬」が買える「零売薬局」、ニーズがあるのになぜ「規制強化」が進むのか、長く続く慣例の「前提」とは
医療用医薬品は、患者が医療機関を受診し、医師が出す処方箋に基づいての販売を前提として承認されている。
だが、約2万品目ある医療用医薬品のうち処方箋が絶対に必要な「処方箋医薬品」は1万3千品目。その他の7千品目は、処方箋に基づく販売は「原則」とされている(品目数は2020年7月時点。厚生労働省の資料から)。
規制強化の流れ
厚労省は、処方箋医薬品以外の医療用医薬品については、大災害などの「やむを得ない場合」に限り、処方箋なしで薬局が販売できるとの通知を出していた。
「必要最小限の量に限ることや、病院の受診を勧めることなどが前提でした」(厚労省の担当者)
この「やむを得ない場合」という明確な線引きのない、いわば「グレーゾーン」の中で、通常は病院で処方してもらう薬を販売しているのが「零売薬局」と呼ばれる薬局だ。
薬剤師の立ち会いのもと、風邪薬や解熱鎮痛剤、花粉症の薬や医療用ビタミン剤など多様な薬を扱っている。店舗数は全国で100ほどにとどまると見られており、認知度は決して高くない。
これまで大きな問題が発生したこともないが、近年、規制強化の流れが強まり、今国会では零売を原則禁止することを盛り込んだ医薬品医療機器等法(薬機法)改正に向けた動きが進んでいる。
「『やむを得ない場合』について、要件をより具体化する方向です」(同担当者)
こうした国の規制の動きに対し、零売薬局側もだまってはいなかった。