「学びの多様化学校は広がってきたが、教え方の多様化はまだ増えていないかもしれない」という言葉が印象的でした。個別最適化は、今の学習指導要領の重要キーワードの1つですが、もっとICTを活用すれば、本当の意味での個別最適化が可能になります。
塩瀬氏は、年に数回、学校を訪れ現場の生徒や先生をフォローしているそうですが、その際、あえてオンラインで授業を行い、顔出ししなくてもよい、アバターで参加してもよい、家から参加してもよいという設定にして、自身もアバターで話をしてオンラインでも学びの楽しさを味わえることを伝えたそうです。
先生はどうしても教室の前に立って授業をするのが当たり前と思っているけれど、勉強の方法はほかにもあります。次の段階としては、教える側の多様化が広がれば、もっと隅々に学びが届くのかもしれません。
草潤中ではすべての授業がオンラインで配信されており、別教室や自宅から参加する場合、画面はオンでもオフでも構いません。1日に1回は先生とコミュニケーションを取れれば出席したことになります。
これについても、画面オフだと生徒がちゃんと学んでいるかどうか確認ができないという意見もありますが、「果たしてリアルの授業で本当に子どもの様子を確認ができているのか。そこに体はあっても心をオフにしている子どももいる」という塩瀬氏。
そもそも先生がICTの授業を受けたことがないので不安があるのはわかるけれど、苦手意識を持っていると楽しい授業は作れません。
しかし、IC Tを活用すれば、瞬時にそこにいる生徒の発言を可視化でき、個別最適化と協働的な学習が同時に可能です。
さらに、現実問題として過疎化が進む地方では学校の統廃合が進み、そこでの学びを保障するツールとしてICTが活用されています。もはやICTの活用を否定する理由はないと言ってもいいでしょう。大事なのは、どちらかを否定するのではなく、どちらも選択できること。むしろ、Z世代の子どもたち相手ですから、今後はやはりICTの積極的な活用が、学びの多様化を進めるうえでのキーワードになりそうです。
教員の研修はもちろん教員免許の取得や採用もICTを積極的に活用したらいいと思うと塩瀬氏。一般の企業では実際に採用試験もオンラインで行われるようになっていますから、若手の採用にはそんな工夫も必要でしょう。
最後に「不安から始まるのではなく、安心から始まる教育へシフトしてほしい」という塩瀬氏の言葉を紹介しましょう。子どもの学習権を保障するという言葉と共に、学校は何のためにあるのかもう一度問い直し、学びの多様化を進める必要があると感じた取材になりました。
(注記のない写真:中曽根氏提供)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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