進学優先の価値観変えた…高校「探究的な学び方」と教科学習の連動で起きた意外な効果 立命館宇治・酒井淳平「キャリア教育×探究」

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2022年にスタートした高校の学習指導要領で「総合的な探究の時間」が必修となって、はや3年が経つ。当初は、どのように取り組めばいいのかと現場から戸惑いの声が聞かれたが、最近ではさまざまな実践が積み上がってきている印象だ。2018年から先行して「総合的な探究の時間」を実施してきた立命館宇治中学校・高等学校では、教員のマインドが180度変わったという。同校で総合的な探究の時間のカリキュラム開発を行った責任者である酒井淳平氏に、教育ジャーナリスト 中曽根陽子氏が「探究」の現在地を聞いた。

現在の学習指導要領が施行されて5年、そのコアメニューとして注目されたのが「探究」です。以前、本連載でも学習指導要領で探究学習がクローズアップされる理由や現状について書きました。

その時はコロナ禍ということもあり、複数の公立小中学校の先生から、「探究的な学びが実践できている学校とできていない学校が二極化している」「小学校では20年前から総合学習をしているから、それが探究だが、やることが多すぎてカットカットの日々。コロナ禍で外にも出かけられない」という悲痛な声が聞かれましたが、今はどうなのでしょうか。

高等学校で「総合的な学習の時間」に代わって「総合的な探究の時間」が必修となってはや3年。世の中も落ち着いてきて「探究」という言葉は以前より一般化している印象です。

とくに高校では、大学入試改革もあり、「探究」が学校現場で多く語られました。しかし、「探究」はそれを一言で言い表すのが簡単でないだけに、新たな施策が流行りのキーワードで終わってしまう危険性もあります。

そこで学校現場で「探究」はどう受け止められ、どのように実践されているのか。今回は、「総合的な探究の時間」の研究開発学校として指定を受けて、ほかに先駆けてカリキュラム開発に挑戦されてきた、立命館宇治中学校・高等学校教諭の酒井淳平氏に探究教育の現在地と具体的な実践、そしてこれからについて話を聞きました。

中曽根陽子(なかそね・ようこ)
教育ジャーナリスト/マザークエスト代表
小学館を出産で退職後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子どもたちの笑顔のために」をコンセプトに数多くの書籍をプロデュース。その後、数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして紙媒体からWebまで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクト」であり、そのキーマンであるお母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)、『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)などがある
(写真:中曽根氏提供)

探究をはやり言葉で終わらせない「HOWではなくWHYから考える」

まず探究学習の現場での受け止めについて、「ネガティブな声もあるがよくも悪くも探究という冠がついたことで、総合的な探究の時間で探究的な学びがしっかりと行われるようになってきた印象だ」と酒井氏。一方で探究が単なる調べ学習で終わっていたり、教員が介入しすぎて生徒が主体的に取り組めないケースもあると言います。

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