周りと同じ行動をさせる学校に違和感

――小学校3年生のときに、不登校になったきっかけを教えてください。

小学校2年までは楽しく学校に通っていました。でも小学3年生になった頃から、学校では周囲と同じ行動をしなければいけないことを疑問に思うように。それである日、宿題をやらずに学校に行ったんです。

担任の先生から居残りを命じられましたが、それでも嫌でやらずにいたら叩かれたので泣いてしまい……。その後、親と先生と話し合いをしたのですが、先生が「叩いていない」と言い張って信用できないと感じました。それ以来、学校には行きたいときにだけ行くようにしたんです。まったく行っていなかったわけではなく、友人もいたので行きたいときには行っていました。

――中学校は3年生の9月まで一度も登校されていなかったとか。

中学1年生のときはボクシング、中学2年生のときは日本一周とやりたいことがたくさんあって、学校に行きたいと思うことはありませんでした。ただ、番組で共演したお笑い芸人のEXIT・兼近さんや極楽とんぼの加藤さんに言われたのが、「一度、中学校に行ってから決めるのもいい。行ったうえで発信してみたらどうか」ということ。その言葉はずっと心に残っていて、自分の中で「行きたい」と思えるタイミングを待っていたら、それが中学3年生の9月だったんです。

――実際に登校してみてどうでしたか。

最初はドキドキしましたが、小学校のときから仲のいい友達が同じクラスだったのですぐになじめて、その日のうちに新しい友達もできました。そこからは友達と遊ぶのが楽しくて、ほぼ毎日通学するように。といっても、給食だけ行く日もあれば、途中で一度抜けて戻るなど、自由な通い方をしていました。先生から注意されることはなく、僕の個性や考え方を尊重してくれたのでありがたかったです。

兼近さんや加藤さんの言葉で行こうとは思っていましたが、それからも周りが急かさずに見守ってくれたのが僕にとってはよかったです。自分で行きたいと思ったときに納得して行けたことがその後につながったので、周りには感謝しています。

今の夢は大学でボクシングをすること

――学校に行っていない間は、どのように学習していたのでしょうか。

インターネット予備校の「スタディサプリ」を活用していましたね。中2の3学期からはオンラインのフリースクールや家庭教師で、勉強をしていました。フリースクールでは動画で受ける授業とは別にメタバース空間があり、生徒がキャラクターを作ってコミュニケーションを取れます。「遊園地」「東京の風景」など決めたテーマに合った空間をみんなで作り上げて遊ぶこともありました。顔を出している人もいればそうでない人もいましたが、みんなと話すのは楽しかったですね。

――現在は日本航空高等学校通信制課程メタバース工学科に在籍されていますが、どのような高校生活を送っていますか。

オンラインで授業を受けたり、レポートを提出したりしています。フリースクールで体験したメタバース空間が面白かったので今の学科を選択しました。仮想空間やアバターを作ったりしますよ。

さらに今は高卒認定試験のために、多いときには1日8時間は勉強。8月に試験があるので、そこでの合格を目指しています。

――日本航空高等学校通信制課程でも高校卒業資格は取れると思いますが、どうして試験を受けるのでしょうか。

大学に進学して、そこでアマチュアボクシングをやりたいからです。

高卒認定試験の合格を目指し、日々勉強に励んでいるという
(写真:本人のXより引用)

小さい頃から格闘技が好きで極真空手をやっていたのですが、3歳の頃に病気を患い、辞めてしまいました。それ以来、格闘技から離れていたのですが、中学1年生の頃に亀田興毅さんに誘われてボクシングをスタート。2021年に亀田さん主催のボクシング興行でデビューして、今はジムに通いながらトレーニングをしています。

高卒認定試験に合格すれば、早い時期から大学受験の勉強ができるので、それを目指してがんばっています。いずれはプロボクサーになりたいですね。

――ゆたぼんさんは好きなこと、やりたいことを見つけるのが上手ですね。

好きなこと・やりたいことに出会えたのは、自分の人生にとって大きかったですね。やりたいことがなくて悩んでいる人も多いかもしれませんが、動画などを見て少しでも興味のあることはやってみること。合わなければ辞めればいいだけなので、面白いと思うなら、すぐにやることが大切だと思います。

学校以外で学べる場所を増やすべき

――「学校に行く」「学校に行かない」の両方を体験してみて、現在はどのように感じていますか。

僕は学校に行かなかったから、日本一周やボクシング、SNS発信など、自分のやりたいことができたと思います。でも学校に行ったから友達が増えて、たくさん遊べたとも思います。両方できて楽しかったし、それでよかったなと。

昔から行きたい子は行けばいいし、行きたくない子は行かなくていいと思っているのですが、僕は親が行くことを強制せず、僕の気持ちを尊重してくれたのがうれしかったです。行かなかったからこそ生まれたのが“ゆたぼん”で、そうでなかったら“ゆたぼん”はいなかったかもしれません。

――学校や先生がこうであったらいいと思う点があれば教えてください。

学校に行きたい子、行きたくない子、それぞれに合わせた環境を作るべきです。理由はそれぞれだと思いますが、不登校の子どもは増えていて約30万人にもなると言われています。フリースクールなど学校以外の場で学べる場所がもっと増えればと。一度きりの人生なのでやりたいことができるように、子どもの意見を尊重してほしいです。

――今、学校に行けずに悩んでいる子どもにどのような声をかけたいですか。

原因がいじめであれば、それは子どもではなく、親や学校の先生などまわりの大人にがんばってもらうべきです。それ以外の理由がわからないけれど行きたくない場合は、焦らずに自分がいいと思うタイミングで行けばいいと思います。そのタイミングは誰にもわかりませんが、きっと自分のタイミングで行かなければ納得できません。そのためにも学校以外で学べる場所があることが大切。僕もこれまで信じてくれた、周りの人たちに感謝しています。

(文:酒井明子、注記のない写真:本人提供)