1つ目は、不登校の原因となっているボタンのかけ違いをかけ直せるチャンスを増やすこと。そのために自分で自分の場所を選択できるようにする。
今の学校は、大半が入学のエリアや所属するクラス、担任を選ぶことはできません。不登校の原因の多くが、たまたま出会った先生や周囲の生徒との人間関係に端を発してかけ違いが起こり、その環境が変えられないまま学校に行けなくなるケースが多い。それなら、学びの多様化学校を増やすばかりではなく選択肢を増やすことも有効です。
今、校内フリースクールを設置する動きは増えていますが、それについても、ほかの場所にいきたいなら違う学校の校内フリースクールを選択できるようにするなど、レンタル移籍のようなことができたらいいと塩瀬氏。
さらに、最近は、子どもたちに選択させようという論は増えているけれど、実は社会と大人が「学校は行かなくてはならない場所であり、将来の苦労を背負い込まないように今苦労しなさい」と子どもに迫る、脅迫的選択肢になっているところがまだまだあると続けます。
草潤中では、登校の敷居をできるだけ下げて、安心して自分が本当にやりたいことを選択できるような場を作っています。そうすることで、まず自分で選べるのだということを知り、最終的に自分で選択できる力を育み、子どもたちを社会とつなげていくことを目標に今のシステムを作ったのです。

ただ、そうした取り組みについて、社会に出たらやりたいことだけやれるわけではない、子どもたちを甘やかしているだけではないかという不安論もあります。
それについて塩瀬氏は、「本来学校は学びの要素が詰まっている場所で、うまく活用できれば自分で0から探すよりはよほど便利な場所である。また、先生は教えるプロフェッショナルとしてそこにいるのだが、学校に行くのがしんどいとか苦しいという気持ちが立ってしまって、出会う前に行けなくなってしまうのは避けたいのだ」と言います。
子どもたちの学びの権利を最優先にした究極の取り組みだと思いました。ただ時間割の選択を一般の小中学校に広げるのは簡単ではありません。そこで塩瀬氏は、「まずは昼食の場所を選択できる自由から始めてはどうか。そこから、時間割の選択につなげていけるといい」と提案します。
必ず昼食は教室で食べなくてはならいという決まりに縛られて、昼休みが苦痛で学校に行けなくなる生徒もいるでしょう。社会に出たら、そこは自由なわけですし、私立中学では、そのようにしている学校はたくさんあります。言われてみたら、確かに縛らなくてもいいことです。当たり前を疑ってみることは大切だなと思いました。
ICTの可能性と積極的な活用は活路開く鍵になるか
2つ目はICTの積極的活用です。
コロナ以降GIGAスクール構想が進み、1人1台のデバイスは配られましたが、「これまでやってきた授業をICTに置き換えようとしているだけで、十分に活用できていない」と塩瀬氏。現状の学習指導要領は教える側の都合でカリキュラムも組まれているが、1人ひとりの理解度も違えば、教科によってはその順番で学ばない方が効率よく学べるものもある。自由進度学習も以前より認知が広がっているが、本来の自由進度ではなく、実際は、同じ教室に閉じこもったまま、タブレットでドリルを進捗に合わせてやるだけに終わっていると指摘します。