「産休クッキー」炎上の背景に見える複雑な感情 負の感情に支配されず、心を軽くするための考え方

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内田:そこで出会う人たちとは、「できるよ」「いけるよ」と応援し合ったり、どんな小さな達成であってもハイタッチして「グッジョブ!」と称え合ったりしています。お互い、できることは違うかもしれない、目指す目標も違うかもしれない。それでもなにか達成したときの喜びや誇りは、誰が上下とか関係なく、共に喜ぶことはできるはずです。

産休クッキーとハーバードクッキー

内田:日本で産育休前にあいさつとして、赤ちゃんや妊婦さんが描かれたいわゆる「産休クッキー」を職場で配ったことが「妊娠した幸せ感をマウントしている」と炎上したというニュースを耳にしました。

もちろん不妊や流産などの経験を誰にも相談できずにいる方もたくさんいらっしゃるので、誰でも他人の妊娠を喜べるわけではないことは事実でしょう。しかし、それにしても職場にあいさつを伝える赤の他人のクッキーの写真さえ批判の対象になるというのは、SNSの反応の異常さを表していますね。さらに、そのクッキーの投稿に対し「いやいや、マウント大国のアメリカではこんなクッキーも配られるんですよ」という写真つきのリポストがあったそうです。なんでも、子どもがハーバードに通うアメリカ人の親が、職場に「ハーバードクッキー」を持ってきたのだとか。

私はこの投稿のことを知ってびっくりしたのですが、それはアメリカの感覚だと、「マウント」ではないからなんです。アメリカでは子どもが通う学校の名前が書かれたトレーナーを着たり、ステッカーを車に貼ったりする親はたくさんいます。それは子どもたちへの誇り、その学校のコミュニティへのサポートを表すもので、私も息子たちが通う公立の小学校の名前が入ったグッズを日常的に使っていますし、自分の所属するハーバード、あるいは出身のイェールのロゴが入ったトレーナーもよく着ています。

それは決して誰かに対して優位性を示したいからではありません。大体、SNSや街中の知らない人に優位性を示してなにになるのでしょうか、という素朴な疑問も残ります。

私は、誇りを持つことと、自慢やマウントは全く別物だと思っています。「マウント」という言葉には、おそらく「嫉妬」の感情も付随するものなのではないでしょうか。嫉妬というのは、ものすごくパワフルな感情で、誰にでも生じます。野放しにすると、嫉妬の負のエネルギーは、嫉妬の対象である相手をどうしても引きずり下ろしたいという思いに繫がったり、他人だけでなく自分を傷つけるものになり得ます。

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