日本の銀行預金は、もはや「損失確定資産」である 約30年におよぶ「ゼロ金利政策」の大きなツケ

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その点、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)はインフレを沈静化させる措置として、2022年2月まで0.25%に据え置いてきた政策金利の引き上げを実施しました。

そして、以後も追加利上げを続け、2023年7月には5.5%にまで達しています。

同じ預金でも米国のものであれば、適用される金利の高さでインフレによる目減りはかなり食い止められたということです。日常生活ではあまり意識されていませんが、米国のように経済構造上の健全性がしっかりと機能していることは極めて大事なことだといえます。

逆に今の日本における経済構造は非常に不健全で、日本銀行が積極的に利上げを進められない状況に陥っています。

アベノミクスによる「異次元の金融緩和」は大失敗

物価上昇率の推移を踏まえれば、本来なら現在の預金金利は1%以上に達しているのが妥当な水準です。にもかかわらず、その域まで利上げを実施できないのはなぜか?

簡単に言えば、長期間にわたってデフレに侵され、その泥沼から抜け出すために金利が実質ゼロの金融政策を30年間も続けてきたことが大きなツケとなっているのです。

2012年末に第2次安倍政権が発足してアベノミクスと呼ばれる政策が打ち出され、その一環で黒田東彦総裁(当時)率いる日本銀行が強烈な金融緩和を推進しました。

異次元の金融緩和によってお金をばらまけば、日本の産業界が強くなって経済も回復するという筋書きだったわけです。

しかし10年以上の歳月を費やしてその政策を続けたものの、現実にはシナリオ通りの成果が得られませんでした。それは当然で、モノやサービスを提供する力が強くなって競争力が高まらなければ、産業界の復活はありえません。

ゼロ金利政策というぬるま湯につかりきったことによって、むしろ産業界全体の力が弱まっています。そのことが災いし、インフレが進んで金融引き締め(利上げ)を進めるべき局面であっても、なかなか実行できない状況に陥っているのです。

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