アップルを「金融事業」へ走らせた地殻変動の正体 相次ぐ"異業種参入"の裏で何が起きているのか

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アップルは2023年に預金サービスを開始。わずか4カ月で100億ドルの預金を集め、人気サービスへの成長した(写真:ブルームバーグ)
アップル、メルカリ、JR東日本……。国内外で異業種企業が金融の世界に参入する事例が増えている。しかも、その多くが驚異的なスピードで事業として成長を遂げているのである。背後でどのような変化が起きているのか。フィンテックベンチャー、Finatextホールディングスの伊藤祐一郎CFOの著書『実践 エンベデッドファイナンス』から一部抜粋・再構成のうえ、金融業界で現在進行中で起きている構造的大変革について解説する。

金融サービスの新たな進化

2023年4月、アップルがゴールドマン・サックスと提携しアメリカで預金サービスを開始すると、金融業界に大きな衝撃が走った。

4.15%という魅力的な預金金利と、アップルカードユーザーならわずか1分で利用可能になるアップルらしい洗練されたユーザー体験は、金融サービスの新たな進化を予感させるものであった。実際、サービス開始からわずか4カ月で100億ドルの預金を集め、瞬く間に人気サービスへと成長を遂げた。

同時期、日本でもフリマアプリ大手のメルカリが金融サービス市場に参入。2022年11月に開始されたメルカードは、メルカリの利用実績に基づく独自の限度額設定や、アプリ内で完結する優れたユーザー体験で人気を博し、カード発行数はわずか約1年4カ月で300万枚を突破した。

この急速な顧客拡大は、金融業への進出に先駆的に取り組んできた丸井グループのエポスカードや、日本を代表するIT企業である楽天グループの楽天カードと比較しても、半分以下の期間での達成となり、業界内外から大きな注目を集めることとなった。

このように2020年前後から、これまで金融業界とは縁のなかった企業が金融サービスを次々と提供し始めている。特筆すべきは、これらが単に大企業の新規事業として開始されるのではなく、既存サービス内に金融機能を統合し、スムーズな利用を可能にする形で展開されている点だ。

ここで紹介したような、一般的なサービスのなかで金融サービスも提供することを「エンベデッドファイナンス(組込型金融)」と呼び、近年、大きな注目を集めている。

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