「日本は観光で復活する」"補助金"より大事な施策 木下斉vs永谷亜矢子対談【後編】
永谷:たとえば、今は「FIT」(Foreign Independent Tour)と呼ばれる個人旅行客が全盛の時代で、多少のムラはあれど、インバウンドの7~9割がFITで日本にやってきます。
彼らは飛行機とホテルを「Booking.com」などで別々に手配して、「好きなときに、好きなところを回っていく」のが旅のスタイル。それなのに、いまだに補助金を使った事業として推奨されるのはツアー造成という現実があります。
本来は、個人旅行が大半という市場の変化に対応することが大切。具体的には、「現地での観光体験にどうやって申し込ませるか?」ということが重要です。
世界の富裕層が求めているものは?
永谷:富裕層観光でいえば、今、世界の富裕層が求めているのは「旅先でインスピレーションを得る体験型コンテンツ」。
でも、そうしたものを作るのではなく、ただたんに旅館の部屋をつなげて広くして、高い値段で売ろうとしたりする。価格を上げてもサービスが変わらなければ、むしろ逆効果ですよね。
重要なのはソフト。体験価値なので、ただ値段を上げればいいわけじゃない。
木下:実際、とある県で国の交付金を活用し、リトリート観光とか銘打った企画で多額の予算を投じたのにまったく集客できていませんでした。
こうした失敗事例は全国各地にたくさんあります。「なぜこんなものが売れると思ったんだろう」と首を傾げざるをえません。