「日本は観光で復活する」"補助金"より大事な施策 木下斉vs永谷亜矢子対談【後編】

永谷:それもこれも、「未経験者が事業に従事しなければいけない制度」に問題があると思っています。
たとえば、自治体の中での人事異動で、水道局からいきなり観光担当になるとか。省庁も自治体も、一部の例外はあれど、だいたい2年で人が変わるじゃないですか。
これでは未経験者がなんとなく担当して、2年では知見を貯めるのは難しく、結果、引継ぎもきちんと行われないことも多いのではないでしょうか。
そして2年経てばまた新しい人が来て、ゼロからのスタートになります。
木下:ゼロからというのが問題で、省庁は単年度予算、単年度決算なので、連続性のある評価ができないんですね。
さらにジョブローテーションも激しいので、「予算をつけるとき」「実行するとき」「評価されるとき」でそれぞれ別の人が担当になることも多く、事業も見直されにくいんですよね。
会計検査院は「横領していないか?」とかは細かくチェックするし、内閣府も地方創生予算などは細かな評価までしているのですが、それがフィードバックされない。毎度同じような予算をつけてしまう。そんなんだから、補助金を貪って何もしない「補助金ハンター」みたいな人間が跋扈してしまうんです。
「本当に必要な人にお金が行き渡らない」構造
木下:補助金の申請って書類審査だから、書類を作るのが上手な人に優先的に補助金がいってしまう。逆に、「本当に地域をよくしたくてがんばっている人」には、なかなかお金が回らない仕組みになってしまっているんです。これは、戦後80年続いている悪習そのもの。
また、地域おこし協力隊制度にも同じことが言えます。
予算は全額、総務省の特別交付税から支給され、協力隊の人数が多いほど予算が増えます。事業費もセットでつけられる。しかし、一部では「自治体の予算だから」と言い張ってあまり自由に協力隊に使わせないなどして、トラブルが相次いでいるケースもあります。
いいケースももちろんあるものの、人数ばかりを追い求めて予算を拡大しているのは、「本質的な地方成長に必要な人材を集める」という視点からは乖離していると思いますね。