「日本は観光で復活する」"補助金"より大事な施策 木下斉vs永谷亜矢子対談【後編】

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木下「異業種の民間企業の参入」は私も大賛成です。そもそも、モノを売ったことのない人間が観光事業なんてできるわけがない。

「地域ごとの個別解しかない」観光事業において、大切なのはディテールを知ることです。稼ぐ観光をちゃんとやっている旅館、ホテルなどはマーケット感覚に社長が優れていて、営業をしまくる、投資しまくるわけです。

永谷:本当にそう! それができないなら、プロに任せるべきです。

「薄利多売」から脱却し「厚利少売」へシフトする

永谷:直接的なものだけでなく、たとえばルールが緩和されて、ホテルが送迎や他社造成の観光コンテンツであれば販売できるようになったんだから、ホテルが宿泊だけでなく観光体験を販売する。

そもそも旅前の早いタイミングでホテルは予約するのですから、そのタイミングで体験の予約も促すような設計にする。

あるいは施設を作るデベロッパーに、建てっぱなしではなく自分たちで観光事業を行ってもらうとか。

そういった異業種参入を認めて、民間事業ならではのイノベーションのもと、地域全体で協力して明確な戦略のもと動いてほしいと思います。

木下:何より重要なのは営業。そして「薄利多売」から脱却して「厚利少売」へとシフトしていくことが、人口減少における地方の持続可能なあり方です。

今までの考え方を変えて、何でも人数を求めたり、大きな観光施設開発みたいな箱物の発想をやめることです。小さなオーベルジュが地方の農林水産業と連携したり、発酵文化と連携したり、そういう小さいけどしっかり利益を出し、地域に波及するものが大切なわけです。

今年は「昭和100年」ですが、もう「昭和の観光発想」から脱却することが大切だと思っています。

*この記事の前半:「地方がどんどん壊される」本当の"原因"は何か

永谷 亜矢子 立教大学客員教授 株式会社an代表取締役

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ながや あやこ / Ayako Nagaya

大学を卒業後、リクルートに入社し広告営業、企画、雑誌の編集に携わる。2005年、東京ガールズコレクションを立ち上げ、イベントプ ロデュースやPR、社長業を兼任。2011年より吉本興業で海外事業、総合エンターテイメントのトータルプロデュースを担い、2016年に株式会社anを設立。企業&中央官庁、自治体へのマーケティング、PRコンサルタント、施設やイベントからメディアまでの様々なプロデュース業を担う。2018年より立教大学経営学部客員教授。2019 年よりナイトタイムエコノミー推進協議会の理事に着任。以降、観光庁、文化庁など有識者やアドバイザー、現在も富山県、富士吉田市はじめ8自治の地域創生事業にハンズオンで長期的に携わっている。

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木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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