新米投資家ほど盲信「S&P500」の不穏な落とし穴 長期投資には為替リスクの少ない選択肢も視野に

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今後30年の投資期間を想定すると、「〇〇ショック」のような経済危機が10回ほど訪れる可能性もあります。過去を振り返ると、リーマンショックやコロナショックのような深刻な状況が発生した際、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利を0%近辺まで引き下げる対応を取りました。こうした状況になれば、日米の金利差は急速に縮小し、為替相場は購買力平価に向かって修正されやすくなります。その結果、円高が進行する可能性が高まります。

例えば、「〇〇ショック」によってS&P500が30%下落し、同時に為替が30%円高に動いた場合、円建てでの評価額は半値近くまで下落する可能性があります。さらに、PERが15倍に修正されて37.5%下落し、為替が購買力平価に収束して41%の円高となった場合、円建てでは約63%の下落となる計算です。これはリーマンショック時の日経平均株価の下落幅を上回る水準です。

過去のリーマンショックでは、多くの個人投資家が市場から退場する事態となりました。同様に、これほどの下落に直面した際に冷静さを保ちながら投資を続けられる投資家は決して多くありません。長期的にS&P500などを積み立て投資する際には、こうしたリスクが存在することを念頭に置き、あらかじめ対策を検討しておくことが重要でしょう。

日本株市場の変化と成長の兆し

一方で、日本株市場にも目を向けると、上場企業の利益成長や株主還元の拡大が目立ちます。具体的には、次のような変化が見られます。

• 上場企業の利益が成長
• 手元資金の増加
• 株価の上昇
• 株主還元(配当や自社株買い)の拡大
• 給与の伸び悩み

1991年から2022年の32年間で、上場企業の経常利益は約2.5倍に成長しました。一方、株主への配当金は約7.7倍に増加。企業が大きく利益を上げても、給与への反映はわずか30%の上昇にとどまっており、利益の多くが株主還元に向けられていることがわかります。

さらに、2024年3月4日には日経平均株価が史上最高値の4万円を突破しました。今後も、東京証券取引所が「PBR1倍割れの解消」や「ROEの向上」を強く促しているため、株主還元の動きがさらに進む可能性があります。

日本企業の強みは、安定的な利益成長と高い内部留保にあります。長期的なデフレ環境の中で蓄積されたキャッシュが、新たな成長投資や株主還元に向かっているのです。

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