「ストレス耐性の強化」と筋トレの意外な共通点 ストレスは決してネガティブなものではない

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早すぎると回復が不十分で、遅すぎると超回復の効果が薄れる。負荷のかかる運動と、適切な休息と栄養管理、再トレーニングを繰り返すことで、より健康的で強い体を作ることができる。

私も最近は、週に1度ジムに通い、筋トレを行っているが、毎回負荷するウェートの重さが増やされていく。その都度、トレーナーさんから、「前回のトレーニングで、翌朝、筋肉痛がきましたか」と尋ねられる。「ハイ、きつかったです」と答えると、「それはいい感じです!」と言われる。

筋肉痛は、筋肉にチョイきつめの負荷がかかっていることを示していて、その後、同じ負荷を続けると痛みはなくなり、さらに重いウェートに挑戦していける。

われわれの身体には、あるところに強い負荷がかかったり、痛めてしまったりすると、次回同じことがあった時に、それに耐えられるように、自分のスペックを強化しようとする働きが備わっているのだ。

「ストレス耐性」というものは、おそらく、そうしたことによって作られるものだ。

「可愛い子には旅をさせよ」が意味すること

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ストレスによってそれに痛みやつらさを感じると、また次回、同じようなストレスがあった時に、前回ほどつらさを感じなくなる。その繰り返しで鍛えられていくのだ。

少々説教くさいが、「若い時の苦労は買ってでもせよ」「可愛い子には旅をさせよ」ということわざがある。昔の人は、困難によって人間が成長することを体験的に知っていたのかもしれない。

そういう意味で、ストレス耐性は「記憶」であるともいえる。

自分が経験したことは、脳だけではなく全身が記憶している。筋肉の「超回復」の現象も、筋肉の遺伝子に、運動をした経験がしっかりと刻まれるから起こるのだ。

1度乗り越えたことは、また乗り越えようとする。私はそこに、命の尊さ、身体へのいとおしさを感じる。

伊藤 裕 慶應義塾大学名誉教授、同大学予防医療センター特任教授、医学博士

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いとう ひろし / Hiroshi Itoh

京都市生まれ。1983年京都大学医学部卒業、米国ハーバード大学、スタンフォード大学医学部にて博士研究員。京都大学医学部助教授を経て、慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授。2023年より現職。世界で初めて、臓器同士がつながりあって疾患が広がる「メタボリックドミノ」を唱えた。高峰譲吉賞、日本高血圧学会栄誉賞など受賞多数。元日本内分泌学会代表理事、日本高血圧学会理事長。著書に、『なんでもホルモン』『幸福寿命』(朝日新書)、『「超・長寿」の秘密』『いい肥満、悪い肥満』(以上、祥伝社新書)、『からだに、ありがとう 1億人のための健康学講座 (PHPサイエンス・ワールド新書)』『ほっこり』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。NHKスペシャルなどメディア出演多数。

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