「ストレス耐性の強化」と筋トレの意外な共通点 ストレスは決してネガティブなものではない
それではここで、ストレスが脳に働きかけて、目標達成のために必要なモチベーションを高めてくれるメカニズムをみてみよう。
人間の体は、ストレスを感じると、副腎からアドレナリンやコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌される。これらのホルモンが心拍数や血圧を上昇させ、身体を緊張状態に導く。それと同時に、脳の特定の領域を活性化させるのだ。
特に、前頭前皮質と呼ばれる領域を刺激する。計画性、意思決定、目標達成のための行動選択など、高次認知機能を司る重要な部位だ。
この部位の活性化が集中力や注意力を高める。ストレスは、目標達成に必要なモチベーションを高め、タスクへの取り組みを促進するということである。
ストレスは、脳内の報酬系にも影響を与える。ドーパミンという神経伝達物質が活性化することで脳の報酬系が機能し、達成感や喜びをもたらす。このため、ストレスがかかって、困難な課題を克服すると、私たちは満足感や喜びを感じ、さらなる努力へのモチベーションが向上する。
ストレスによって、オレキシンの分泌も増える。やる気や意欲を高めるホルモンだ。世界的な睡眠学の権威である筑波大学の柳沢正史氏らが発見したホルモンだが、発見当初、オレキシンを動物に投与すると、摂食量が増えたので、摂食を刺激するホルモンと思われ、オレキシン(オレキとは食欲の意味)という名前がつけられた。
しかし、オレキシンは、摂食だけでなく、われわれを覚醒させ、意欲を刺激するホルモンであることが分かってきた。
ストレスを感じ覚醒する。乗り越えて満足感を覚える。また新たな挑戦や困難に立ち向かう意欲がわく。これを重ねていくことで、われわれは力強くなり、鍛えられていくのだ。
「ワクワク感」はモチベーションのエンジン
乗り越える満足感を知れば、困難を前にすると、ワクワクするようになる。無意識に、「きっとあの快感を味わえるはず」と期待するのだ。このワクワク感は、モチベーションの原動力になる。
未踏の地に挑む冒険家の例を出すまでもなく、身近にも、ストレスフルな事態に積極的に向かっていく人を見かけると思う。こういう人たちは、「やっかいごと」「難しそうな課題」を前にして、ワクワクしているのだ。
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