米国防総省が公表した新国防戦略指針が示唆するもの--日本の防衛政策へも影響
アジア太平洋地域へ重点のシフト
「新国防戦略指針」について、主に日本にかかわる部分について見てみたい。まず、「米国の経済・安全保障上の利益は、西太平洋・東アジアからインド洋・南アジアにかけての弧における動きと密接に関連している」とし、それに応じて米軍は、「世界規模の安全保障に引き続き貢献しつつも、アジア太平洋地域に重心を移す(we will of necessity rebalance toward the Asia-Pacific region)」と強調している。
その際、アジア太平洋の安全保障の基盤である既存の同盟関係とインドをはじめとする台頭しつつあるパートナーと協力するとしている。
中国との関係
中国については、中国の台頭が米国の経済・安全保障に長期的に多様に影響するとの認識を示したうえで、東アジアの平和と安定のため中国との協力の重要性を認めつつも(Our two countries have a strong stake in peace and stability in East Asia and an interest in building a cooperative bilateral relationship)、中国の軍事力の増強については、地域における紛争を避けるために「その戦略的意図を明確すべき」(the growth of China's military power must be accompanied by greater clarity of its strategic intentions in order to avoid causing friction in the region)としている。また核武装を追求する北朝鮮の挑発を抑止するため同盟国等と協力するとしている。
米軍の主要な任務(Primary Missions of the U.S. Armed Forces)
こうした安全保障環境の認識の下、20年までの米軍の任務として10の項目が挙げられている。
1.テロおよび非正規戦闘への対抗(Counter Terrorism and Irregular Warfare)
2.武力攻撃の抑止および打破(Deter and Defeat Aggression)
3.近接阻止・地域拒否の状況下での戦力投射(Project Power Despite Anti-Access/Area Denial Challenges)─米軍基地や米軍空母などを攻撃することで、米軍の行動を一定期間拒否しようとする中国などの軍事戦略に対抗するため、そうした状況下でも効果的に行動する能力を確保すること。
4.大量破壊兵器への対抗(Counter Weapons of Mass Destruction)
5.サイバー空間および宇宙における効果的な運用(Operate Effectively in Cyberspace and Space)
6.安全かつ効果的な核抑止の維持(Maintain a Safe, Secure, and Effective Nuclear Deterrent)
7.本土の防衛および文民機関への支援の提供(Defend the Homeland and Provide Support to Civil Authorities)
8.安定のためのプレゼンスの提供(Provide a Stabilizing Presence)─同盟国等との共同演習などを維持しつつも、場所や頻度などについて選択する。
9.安定化および反乱鎮圧作戦の実施(Conduct Stability and Counterinsurgency Operations)─イラクおよびアフガニスタンにおいて得た能力や教訓を維持しつつも、大規模で長期間の作戦に適した兵力規模は維持しない。
10.人道および災害救済活動等の実施(Conduct Humanitarian, Disaster Relief, and Other Operations)
特に「5.サイバー空間および宇宙における効果的な運用」は、日本にとっても重要な分野である。詳細について稿を改めて見ていきたい。
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