「オーバーツーリズムという幻想」煽る人の無理解 「定率の宿泊税」「局地的な課題解決」を徹底せよ
政府の方針には観光従事者の所得向上が組み込まれており、観光業界では最低賃金で働く労働者が多いことから、第二次安倍政権から続く最低賃金引き上げ戦略とも密接に関連しています。石破政権が2020年代に最低賃金を1500円にする政策を掲げていることも極めて重要です。
「オーバーツーリズム」と「マスツーリズム」の違い
インバウンド戦略に関するニュースでは、一部の人が必ず「オーバーツーリズムだ!」と騒ぎます。
実は、日本では「マスツーリズム」と「オーバーツーリズム」の違いが十分に認識されていないと思います。マスツーリズムは単に「人が多いこと」を指します。例えば、大英博物館にはたくさんの人が訪れるため「マスツーリズム」ではありますが、対応ができているため「オーバーツーリズム」とは言えませんし、言われることもありません。
一方「オーバーツーリズム」とは、ヴェネツィアのようにインフラに対して人が多すぎて、どんなにうまく対応しようとしても対応しきれない状態を指します。
冷静に評価すれば、日本は「オーバーツーリズム」ではなく、「マスツーリズム」に対応できていないだけだと言えます。適切に対応すれば、オーバーツーリズムとは言われなくなるでしょう。
実際、日本全体として見れば、オーバーツーリズムは発生していません。
マスコミなどは恣意的に「オーバーツーリズムが起こっている」と結論ありきで報道し、統計的な検証をせずに、特定の例を取り上げて歪んだストーリーを伝える傾向があります。
京都のインバウンドの状況は、時折ヴェネツィアと比較されますが、これは適切な比較とはいえません。ヴェネツィアには約5万人の住民に対し、コロナ前には2000万人の観光客が訪れていました。これは住民の400倍に相当します。これがオーバーツーリズムの典型です。
同じ計算方法を適用すると、京都市の人口143万人に対し、観光客が5.7億人訪れることになります。明らかに、京都はヴェネツィアのようなオーバーツーリズムにはなっていません。ヴェネツィアとの比較はただの煽りにすぎません。バルセロナなどの比較も不適切な感情論です。
まず、マクロ視点から見てみましょう。
2023年の実績(UNWTO)を見ると、世界のインバウンド観光客数は13.1億人でした。世界の人口80.2億人(世界銀行)に対して16.3%、先進国のインバウンドは7.2億人で、先進国人口14億人に対して51.4%でした。
2024年の日本の人口に対するインバウンド観光客の割合は29.8%で、他の先進国と比べても特に多いとは言えません。
小さい国と比較しても仕方ないので、主要30カ国の中で比べてみましょう。最新の2023年のUNWTOのデータによると、日本のインバウンド比率は28位です。2024年のデータでも、25位を超えてはいないと考えています。オーバーツーリズムを裏付ける根拠はありません。
![](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/2/1/570/img_217eb21344dc1458848a67c7aa111cc2755458.jpg)
無料会員登録はこちら
ログインはこちら