横田:清水寺に大西良慶という立派な方がおりましてね。108歳くらいまで長生きをした人ですけれど、一遍この人に会ってみたいと思いながら、生前はお会いすることが叶いませんでした。そのときに思いました。これからはあとにしようということはやめようと。もし出逢いの機会があれば、必ずそのときに会っておこうと思うようになりました。
栗山:本当にそうですね。
横田:そういう自分にはないものを持っている人に会うというのは、やっぱり人生の一番の楽しみですよね。
出逢いを真の出逢いにするために
栗山:僕がすごくラッキーだったのは、自分がダメな選手だったので、どんな人に会っても僕よりうまく見えるんですよ。だから、上から目線で人に会うことはほとんどなかったです。とにかく教えてくださいという感じで誰とでも会っていました。それがよかったと思うんです。おそらく皆さん、「こいつをなんとかしてやろう」と思ってくださったのではないかと。
横田:こうして対談をして思いますのは、栗山監督が実に謙虚で素直でいらっしゃるということです。謙虚・素直こそ縁を生かし、出逢いを真の出逢いにするための要訣なのでしょうね。
栗山:ただ、僕自身は謙虚にならなきゃいけない、素直にならなきゃいけないという気負いもなくて、自然にそういう姿勢で人と接してきたように思います。それしかできなかったんですけれど、今振り返ってみると、それがプラスになったのかなと感じます。
横田:鎌研ぎの名人の話を聞いたことがあります。その人がなぜ名人かというと、どんな下手な人が研いだ鎌でも自分には及び難い点を1つ見つけることができるからなんです。
人間は他人が自分より劣っているところは簡単に見つけられるんですよ。でも、人を見て、この人には自分には決して及ばない優れたところがあると認めるのはなかなか難しいものです。
いろいろな人に会えば、時には、この人とはあまり馬が合わないなと思うようなこともあるでしょう。そういうときに、私はこの鎌研ぎ名人の言葉を思い出して、絶対にこの人の中にも自分には及ばない何かがあるんだと思うようにしています。実際にそれを探すつもりで接していると、本当に1つぐらいは必ずいいところが見つかりますよね。
栗山:ああ、いい話ですね。そういう姿勢で人と接することによって、自分の運も拓けていくものなのかもしれませんね。
横田:ええ。出逢いというものが人の運命を変えていくことは明らかでしょうね。
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