生保・損保業界で相次ぐ金銭詐取などの不正事案 東京海上は名簿を横流し、大樹生命では金銭詐取

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他方、損保業界では、損保から銀行への出向者による「スパイ活動」の疑惑がまたぞろ発覚した。

九州フィナンシャルグループ傘下の鹿児島銀行(鹿児島市)と肥後銀行(熊本市)は1月16日、東京海上日動火災保険などから受け入れていた出向者が、合計で約1万7000件の顧客情報を出向元の損保などに漏洩していたと発表した。

鹿児島銀では東京海上からの出向者が、肥後銀では東京海上、損害保険ジャパン、第一生命からの出向者が、それぞれ火災保険や生命保険などの契約データを漏らしていた。

東京海上は不正競争防止法で問われる可能性も

中でも悪質なのが、東京海上だ。競合他社の契約者名や保険料、保険金額などのデータを出向者がプリントアウトして、東京海上の支店社員に直接手渡ししていた。同資料は、グループの東京海上日動あんしん生命保険にも連携されていた。

出向者が銀行の預金者リストと融資先の法人リストを持ち出していた東京海上日動火災保険(記者撮影)

手渡ししていたのは、保険の契約情報だけではない。鹿児島銀、肥後銀の預金者データや融資先の法人データ(住所や従業員数、取引店舗名など)についても、出向者が「営業推進リスト」などとして持ち出していたという。

預金者リストや融資先法人リストは、主にあんしん生命の投資性保険商品や節税保険の営業推進先を選定する目的で、出向者が持ち出したとみられる。東京海上は鹿児島銀などに対して「実際には一切使用していない」と説明している。

ただ、産業スパイなどを取り締まる不正競争防止法では、企業が持つ顧客名簿などの営業秘密情報が、不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、民事上・刑事上の措置をとることができるとされている。

同措置など今後の対応については鹿児島銀、肥後銀ともに「検討中の段階」だが、東京海上は今後、不正競争防止法上の営業秘密の侵害に問われる可能性がある。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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