日本一発砲件数の多い福岡県--「暴力団排除条例」対策セミナーに総務担当者が殺到する理由
1月26日木曜日午後。福岡市博多区の福岡商工会議所で、「暴力団排除の実務Q&A」なるセミナーが開催された。2011年10月までに全都道府県で導入された暴力団排除条例で、企業が暴力団など反社会的勢力(反社)との関係に頭を抱える中、総務担当者らを集めて質疑を通じ、互いに情報を共有し合おうという趣旨だ。
参加者は約80社・約100人。総務部門が5割を占めたほか、法務・コンプライアンス担当、お客様相談室担当、購買担当者なども目立った。業種的には建設会社やメーカー、サービス業がそれぞれ2割、ほかには小売業が1割ほど(写真は福岡で開催された暴排条例セミナー)。
「通販で受けた注文で、当社としては契約を受諾したい。だが配送業者が、送付人または発送先が反社であることを理由に、配送業務を拒否している」「各都道府県にある暴力追放運動推進センターで得られる反社の情報はどこでも同じなのか」--。
参加者100人中、取引先の取引先まで含めて、契約書に暴力団排除条項を導入している、と手を挙げたのは、たった1~2人だったという。
昨年12月に刊行された『暴力団排除条例ガイドブック』(レクシスネクシス・ジャパン刊)を手に、それら具体的な質問に答えたのは、TMI総合法律事務所の弁護士や前警察庁刑事局組織犯罪対策部の担当者、さらに危機管理コンサルタントであるエス・ピー・ネットワーク社の3者。セミナーは東京で昨年12月、大阪でも今月に開かれ、いずれの会場もほぼ満員だった。
セミナーがとりわけ福岡県で注目されているのも無理はない。今月19日には、指定暴力団「五代目工藤会」に対し、福岡県警察本部が殺人未遂容疑で家宅捜索に入ったばかり。11年に全国で起こった発砲事件44件のうち、実に18件が福岡県と、最多を占めている。半月か1カ月に1回、起こっている計算だ。昨年3月には、西部ガス社長宅や九州電力会長宅に手榴弾が投げ込まれるなど、一般人も危害を受けている。また、スーパーゼネコンである清水建設が集中して狙われるなど、建設業関連の被害が多いのも見逃せない。