5000人以上の遺体と向き合った死体調査官の記録 「死体と話す NY死体調査官が見た5000の死」

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反対尋問の際に、ゴルツァーは別の解釈を提示した。コーリー・アーサーは友人からナイフを取り上げようとして切られた、真犯人から敬愛する先生を守ろうとしたと主張したのだ。なるほど、その仮説は悪くない。しかしゴルツァーはその仮説にこだわるよりも、わたしの信用性と資質を攻撃することを選んだ。わたしは怒り、自分の役割を果たそうとして失敗した。

「ミス・ブッチャー、あなたはナイフの切創に関する本を書いたことがありますか? 一章でも構いませんよ? 一度もないって? なのにあなたは切創の専門家を名乗ってるんですか?」と彼はあざ笑った。

「いいえ、本を書いたことはありません。ですが、何百件ものナイフの切創を見ました」

陪審員がわずかにわたしに味方するのを感じたが、彼が仕返ししてきた。

「ミス・ブッチャー……あなたはそもそも医師ではありませんよね?」

「ええ、医師ではありません。しかし──」。言い訳しても無駄だった。怒りで顔が真っ赤なのがわかったし、攻撃され、信用を傷つけられたせいで、その後に発言した死亡推定時刻に関する証言も台なしになった。ムキになって答えたせいで、わたしの主張はますます信頼性と確実性を欠くこととなった。あの男は、人を見きわめて弱点を突く方法を知っているのだ。

気持ちを軽くしてくれた局長の言葉

法廷を終えてオフィスに戻ると、わたしはドクター・ハーシュのところへ行った。彼は窓の近くに立って、小さな剪定ばさみで盆栽の手入れをしていた。彼はわたしに椅子に座るよう促した。

「局長、しくじりました。被告側の弁護士に言いがかりをつけられ、ついムキになって言い返してしまい、確信もなく主張しているみたいに聞こえたと思います。最悪です」

彼はいつも持ち歩いているパイプに火をつけ、口元をゆがめて笑みを浮かべた。「きみは大丈夫だよ、バーバラ。自分を責めてはいけないよ」

「大丈夫じゃないです、ひどいもんです。あいつに侮蔑的にあざ笑われて、腹が立ってしまったんですから」

「つまりきみはみんなと同じように罠にはまったんだね」

「まんまとはめられました。ド素人みたいな印象を与えたと思います」

「陪審員に、きみの証言への疑問を抱かせるのが弁護士の仕事だからね。きみの仕事は見たままに真実と事実を語り、自分の経験に基づいて見解を述べることだ。そうすれば状況はまったく違ってくるだろう」

わたしはすぐに気が楽になった。彼はいつもわたしの気持ちを軽くしてくれた。

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