参天製薬の「近視進行抑制剤」に注目が集まる理由 国内で初承認、小児の近視対策に新たな選択肢

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近視は眼軸(眼の奥行き)が伸長し、眼球がラグビーボールのような形状になることで引き起こされる。ほとんどの場合、成人後に進行が止まり、眼鏡やコンタクトレンズによって視力矯正を行うことで日常生活を過ごすことができる。

ただ、近視が進行した「強度近視」になると、眼球の後方にある網膜や視神経にも影響を及ぼし、緑内障や白内障といったより重度の疾患につながるリスクがある。眼鏡などによる矯正が困難となり、場合によっては失明につながる場合もある。

小児期の治療が大切

前述のとおり、近視は若年期における進行が速い。幼少期に近視を発症すると、その分だけ、強度近視につながる可能性が高くなる。大野教授は「軽度の近視でも緑内障を発症する可能性は高くなる。小児期に治療することは大切だ」と指摘する。

これまでも進行抑制の方法がなかったわけではない。特殊なコンタクトレンズを使用したり、今回の承認剤と同じ成分の点眼剤を海外から個人輸入したりする方法があった。ただ、国内の製造販売承認を受けていないため、高額となりがちで、医師の処方のハードルも高かった。

「リジュセア」の主成分となるアトロピンは、もともと瞳孔を開いた状態にするための検査剤として使用されてきた。眼軸を伸長させる物質の活動を抑制する効果があることでも知られ、点眼剤として使用するために、「より低濃度のアトロピン開発が進められてきた」(参天製薬製品開発本部プロジェクトマネジメントグループマネージャーの小山真治氏)。

シンガポールの民間企業が開発した点眼剤は、アトロピン濃度が0.01%。近視の進行抑制効果は見られたものの、治験での効果が小さく、同国で承認取得に至らなかった。今回、参天製薬が開発した点眼剤はアトロピン濃度が0.025%で、0.01%のものよりも進行抑制効果が高く、治験では重篤な副作用も認められなかった。

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