参天製薬の「近視進行抑制剤」に注目が集まる理由 国内で初承認、小児の近視対策に新たな選択肢
近視進行抑制剤の治験は、抑制効果を確認するものとなるため、長期にわたる実施が必要となる。実際、参天製薬は治験に3年を要した。また、対象が小児ということも、治験を難しくした要因だったという。
安全性を高めるため、剤型にも工夫を施した。発育段階にある小児が点眼剤を長期間利用すると、一部の防腐剤が角膜障害を引き起こすリスクがある。そのため、点眼剤でありながら使い切りタイプとすることで、防腐剤の使用を抑えた。
なお、「リジュセア」は成人が使えないわけではない。成人でも近視が進行する場合があり、特に強度近視の患者にその傾向がみられるという。こうした患者が利用すれば、効果が見込まれる。
売上高は最大600億円を見込む
日本など東アジアでは近視の有病率が高いことで知られている。原因については明らかではないが、遺伝的要因や教育を始める時期が早いことなどが考えられている。さらに近視は欧米でも近年増加傾向にある。2050年にその有病数は、世界人口の約半数に達するとの推計もある。
こうした中で今後、近視進行抑制剤のニーズは高まりを見せそうだ。
現状、この分野の承認剤は中国とオーストラリアの2カ国で例があるだけで、世界的に競合が少ない。参天製薬は「リジュセア」の治験を中国でも実施中で、同剤の年間売上高を最大600億円と見込む。さらに、米バイオ企業から導入した別の近視進行抑制剤も欧州で治験を実施しており、欧州のほか中東などで販売を計画する。
国内での普及には環境整備も必要となりそうだ。現状では点眼剤だけでなく、病院などでの検査費用なども保険が適用とならない。「患者によって必要な治療は異なる。診断や治療方法の選択など、眼科医への啓蒙も必要だ」(大野教授)。この新剤が、近視抑制の必要性に目を向けるきっかけになるかもしれない。
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