アクティビスト銘柄で顕在化する「後始末リスク」 手元資金が急減し、巨額還元の撤回も困難に

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東洋証券は2023年12月、大株主のUGSアセットなど4社を「共同協調関係」にあると認定している。とはいえ、引き続き「対立相手」であることに変わりはない。4社が保有していた30%程度の持ち分に対して、今回買い取ったのは半分程度。すべてを買い取ることはできなかった。全量買い取れるほどの余剰資本がなかったともいえ、この点も東洋証券の置かれた経営環境の厳しさを物語っている。

大規模な株主還元が株高をもたらし、それによってアクティビストの退場を促したケースは2024年にもう一例あった。アパレルメーカーのダイドーリミテッドだ。

同社でも、7月4日に大幅な増配と自己株買いを発表した直後に株価が高騰。そのタイミングで大株主だったアクティビストファンドのストラテジックキャピタルがすべての保有株を売却した。

模索が続く攻略法

株主還元による株高によってアクティビストが退場し、経営への圧力こそ弱まるが、大規模な株主還元を撤回できるわけではない。

ダイドーの山田政弘会長兼CEOは11月に開いた2025年3月期中間決算会見でこの点を問われ、「簡単に(巨額還元を)覆すわけにはいかない。今の株主から(還元ではなく)成長投資に使ってくれという声が出れば考える」と答えた。大規模な株主還元でアクティビストを退出させた後も、その「後始末」に悩む姿がにじむ。

東洋証券においても、たとえアクティビストらが保有株をすべて売却したからといって、大規模な株主還元の撤回は難しいのが現実だ。

「アクティビストに出ていってもらうため」の還元だとは説明しておらず、あくまで適正な資本コストと株価を意識した経営を検討した結果だとしているからだ。

一時600円を超えていた東洋証券の株価は、大株主からの買い取りを発表した直後に値を下げ、その後は550円前後で推移している。巨額還元を撤回すれば、数年前の低い株価水準に戻ってしまう可能性もありそうだ。

2024年に株主総会をにぎわせた2社がくしくも似たような状況で「後始末」に苦しむ。アクティビストとの攻防に攻略法はあるのか。2社の事例は2025年に向けた教訓とも言える。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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