「洋上風力発電」が地球に悪影響も与える驚く事実 世界の科学者による解析で示された報告書の中身
4年前、私はIPBESで新たな未来を拓こうと世界における政策変更についての研究を進める研究者にインタビューしたことがある。「この世の終わりを描くディストピア的な見方、このままで良いとする楽観的な見方のどちらにもうんざりしている」若手研究者たちが中心になり、世界各地の取り組み事例に注目している、と語ってくれた。
国立環境研究所の研究員、吉田有紀さん(37歳)は、そうした若手研究者の一人だ。報告書本体の第一章で主執筆者を務めた。吉田さんによると、報告書はスペイン、アフリカ・ケニア、南米など世界の取り組み事例に関する4万5000の文献をもとに、さまざまな事例の分析に力を入れたという。
日本の取り組み事例も盛り込まれた。その1つ、新潟県佐渡市では、2008年にトキの放鳥を開始し、野生復帰を進めてきた。佐渡市の認証米「朱鷺(とき)と暮らす郷(さと)」制度のもと、農家が中心になってトキの生息に欠かせない水田の環境づくりに取り組んだ。
トキの放鳥が開始されてから10年目となった2017年7月、私はNPO法人「環境文明21」が主催したエコツアーに参加して佐渡に行った。農家の人たちの田んぼアートにより、水田にトキの舞う姿が描かれていた。
報告書で言いたいのは「原則的な当たり前のこと」
社会変革報告書要約版の「鍵となるメッセージ」には、「現存する多くの取り組みは大きな変革につながる可能性を持つ」「(取り組み事例の研究でわかったことは)自然と人々の双方にとって好ましい結果が10年以内に実現できることを示している」とある。
報告書作成に加わった吉田さんは「(研究報告が)何を言いたいか、何を確認してきているか、というのは、とても原則的な当たり前のことで、人にかかわるにしろ、自然にかかわるにしろ、本当に正しいと思える生き方を一人一人が行っていこうという話になると思う」と語った。
「社会変革」といっても、その道筋は、世界の現実から見えにくい。ましてや、抽象的な言葉が並ぶ政策決定者向けの要約版を読んでも判然としない。取り組み事例を盛り込んだ報告書本体を読めば、具体的なイメージを思い描くことができるのだろうか。
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