「洋上風力発電」が地球に悪影響も与える驚く事実 世界の科学者による解析で示された報告書の中身

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続けて18日に公表された報告書は、日本語では「社会変革報告書」と呼ばれる。生物多様性の損失の根底にある要因を明らかにし、大変革の可能性を探った。

政策決定者向けの要約版が先に公表され、報告書本体は来年1月に公表される予定。世界42カ国から選ばれた専門家101人(うち日本人6人)が作成した。

報告書は、生物多様性の損失の根底にある要因を①自然と人間の乖離②権力と富の集中③短期的、個人的な物質利益を優先させてきたことーーとし、これらが生物多様性と生態系保全の努力や自然の持続可能な利用のための努力を損ない、大変革への挑戦をくじく障壁となってきたとした。

この要約版でも、冒頭の「鍵となるメッセージ」で、「これまでの、そして現在のアプローチは自然の劣化を止め、反転させることに世界的規模で失敗している」と断じ、加速する生物多様性の損失、気候変動、環境汚染の危機は、「生物物理学的な後戻り不可能な転換点」に近づくリスクを増大させていることを指摘した。

「生物物理学的な後戻りできない転換点」とは、気候変動の分野でいうと、産業革命前からの世界の平均気温の上昇幅がある一定の限度を超えると、どんどん地球温暖化が加速し、例えばグリーンランドの氷床の融解が一気に進むなど、防止や抑制が効かない状態になることを指す。かねて科学や生態学の分野で指摘されてきた。

生物多様性や生態系の機能保全にかける資金の少なさ

こうした基本認識を踏まえ、報告書は、世界の経済活動が自然に依拠して利益を上げている一方、生物多様性や生態系の機能保全にかける資金が極端に少ないことを、数字をもって示した。

要約版26ページにある図「世界の持続可能性の経済的状況:相互依存と資金のギャップ」を再掲する。

世界の持続可能性の経済的状況:相互依存と資金のギャップ(要約版26ページにある図から)

説明の英文を日本語にすると、以下の通りになる。
1) 世界のGDP 105兆6000億USドル
2) 中~高度に自然に依存している部門で生じた世界のGDP 58兆USドル
3) 自然の劣化に責任のある部門による外部不経済 10兆7000億USドル
4) 自然の劣化に責任のある部門への直接的な補助金 1兆4000億~3兆3000億USドル
5) 生物多様性を世界で維持し、生態系の機能を保つためには必要な金額に比べ、2030年まで、年5980億~8240億USドルが足りない。
6) 世界の生物多様性保全のための資金 1350~1560億USドル

* 1)、2)は2023年の値、3)~6)は既存データをインフレ調整し、2023年の値として推定したもの

この図の説明から、筆者が読み取ったポイントは以下の通りだ。

▽ 世界のGDPの約半分は自然に依存している部門から生じた。
▽ 自然を劣化させた経済活動により、大気や水の汚染など「外部不経済」が引き起こされ、被害額として金銭に換算すれば、自然に依存している部門が生み出したGDPの5分の1に達する。
▽ 自然を劣化させた経済活動に対して投じられた補助金の額の半分の金額があれば世界で生物多様性を維持し、生態系の機能を保つことができるが、世界の生物多様性保全のための資金はその5分の1以下である。
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