JR東海道線の通勤特急「湘南」はどこをどう走る? 馴染み薄い貨物線から見たもう一つの東海道線
これらの芸当はライナーや通勤特急だけの話ではない。かつては一部の寝台特急を小田原―茅ヶ崎間で貨物線に回していた。それは必ずしも速達性が筆頭理由ではない。一般電車のダイヤの隙間をライナーが次々埋めてしまったため、寝台特急を移したのである。朝の列車の優先順位は、まず第一が通勤電車。寝台列車は特急と言えども二の次だった。現在、唯一残されている「サンライズ瀬戸・出雲」がそのような位置付けにある。
逆に、ここでは定期的に貨物列車が旅客線を走る事例もある。主たる理由は貨物線の線路保守で、週2回程度、必要箇所に応じて鶴見―小田原間や大船―小田原間で、深夜の電車運転が止まった時間帯に人知れず実施している。またさらに、貨物列車は夜こそゴールデンタイムのため、日中に長大保守間合を確保して作業する場合もある。その際は横浜駅を貨物列車が堂々と通過するシーンが展開する。
市街地を避けたトンネルルートで貨物駅を通過
乗車した「湘南6号」は下り貨物列車と何度かすれ違いながら、東戸塚付近で猪久保トンネルに入る。横須賀線品濃トンネルと坑口の地点は同じだが、はるかに長く、抜け出るまで3分半を要する。乗車していても判然としないが、シェルターでつないだ計3本のトンネルが横浜の住宅地地下に約5kmにわたって続く。この中でも貨物列車とすれ違い、抜けると貨物駅の横浜羽沢。2019年開業の相鉄・JR直通線(東急とも直通した2023年3月以後は相鉄新横浜線の名を使用)の羽沢横浜国大駅が隣接する。
場所は横浜駅からは約3.7kmも離れている。かつての品鶴線同様、市街地への敷設を避けるために郊外に回し、丘陵地のためもあって長大トンネル経由を選択したのだ。貨物駅は、第三京浜〜横浜新道と横浜市環状2号線の交差から近い地の利が理由だが、当時は山林田畑だった谷地に設けられた。それでも、反対運動により事業期間は倍に延びた。トンネル間をつなぐシェルターは騒音防止策である。
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