実録「石丸現象」、"選挙の神様"も舌を巻いた瞬間 選対事務局長も「まったく予期せぬ展開」だった

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青山:素地はあったということですね。石丸氏はその素地をとくにうまく生かせる、ネット選挙に適した人物だったということでしょうか。

藤川:そう思います。誰がやっても成功するものではないのかなと。先の総選挙でいえば、同じようにネットを駆使してうまくいったのが国民民主党だった。自民党総裁選挙においては高市早苗氏だった。

自民党の党員層がYouTubeなんか見るのかなと、私は思っていました。だけど、オールドメディアの情報があまりに一方通行で、それだけではなかなか納得できないから、有権者が自分で情報を取りにいく時代になってきたんですね。60代、70代の人でもけっこうYouTubeを見ています。

選挙にネットを使ってもいいということになって、10年経ちました。この間で徐々に素地が築かれ、そこでうまく立ち回れる人が出てきたことが、今年の選挙結果につながったのかなと。

「政策語り」を明確に拒否した石丸氏

青山:石丸氏は選挙戦を通じて、政策を訴えることにあまり時間を割きませんでした。一方で斎藤氏は、これまでの実績を含め政策の話もたくさんしていました。この軸足の置き方の違いは、SNSの選挙戦にあまり大きな影響を及ぼさないのでしょうか?

鳥海:どちらを重視するかは、タイミングなどによっても変わってくると思います。ただいずれにせよ、ネットの場合はナラティブ(物語性)をうまく作っていくことは重要だと思います。

難しい政策論がわからない人にも、物語であればすっと入ってきやすい。物語性という点でいえば、石丸氏も斎藤氏も、本人や応援する人たちがうまい作り手だったといえるでしょう。

青山:藤川さんは石丸氏の選挙戦で、ナラティブを作ることを意識されたのでしょうか?

藤川:私は従来型の人間なのでむしろ、「都知事選挙なのだから、東京をどうしたいのか、政策的な部分を示さないと有権者にはわからないぞ」と石丸氏に言っていたのですが、彼には明確に拒否されました。「藤川さん、違いますよ」と。

石丸氏は、「有権者のほとんどは政策をもって人を判断しない。選挙は人柄への信認行為なんだ」と話しました。だから自分は自己紹介や経歴を語るんだと、選挙前から明言していました。

その時は、それで大丈夫なのかと心配にもなりましたが、結果を見れば明らかです。石丸氏は直観力と、時代を読むマーケティング力に長けていて、つねにYouTuberとしての”見られる戦略”を意識してやってきたんだというのを、実際にお付き合いする中で痛感させられました。

▼前編

撮影・編集:昼間將太

▼後編

撮影・編集:昼間將太
青山 和弘 政治ジャーナリスト、青山学院大学客員研究員

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あおやま かずひろ / Kazuhiro Aoyama

元日本テレビ政治部次長兼解説委員。1992年日本テレビ入社。1994年に政治部に異動し、以来羽田政権から石破政権まで16の政権を取材。野党キャップ、自民党キャップ、ワシントン支局長を歴任し、国会官邸キャップを2度6年に渡り務める。与野党、省庁を問わない幅広い人脈を持ち、分かりやすい解説には定評がある。2021年に独立し、メディア出演、記事執筆など精力的に活動している。HP:青山和弘オフィシャルウェブサイト

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