韓国・尹大統領弾劾決定「野外フェス」のあと 待ち受けるのは熾烈な権力・法廷闘争か
一方、「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)はじめ野党側も、やはり尹錫悦とは何者かを十分に理解しないまま、手段を選ばず彼の足を引っ張り、挑発を繰り返した。
戒厳令を出した際、彼は野党が22件もの弾劾訴追案を発議し、行政府を麻痺させていると非難した。実際、野党が弾劾のターゲットにしたのは、省庁トップ、裁判官、検事、放送通信委員長など多岐にわたる。
尹錫悦という人物を政界は理解していたか
とりわけ、自分たちの意に沿わない司法判断をしたからといって裁判官や検事を弾劾しようというのは、三権分立を脅かす。ましてや、尹錫悦は元検事総長。怒りを募らせないはずがない。
金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人のスキャンダルをめぐっては、野党が国会での多数の力で特別検察官の任命を可決し、それを尹錫悦が拒否権を行使して止める、というサイクルが3度繰り返されている。
頑なに夫人を庇う尹錫悦の姿勢には与党からも苦言が呈されていたが、夫人の問題はいずれも国家を左右するほどではなかった。単に、「叩けば叩くほど政権支持率は下がる」という、政争における強力なカードに過ぎない。
そして、これは決して尹錫悦に賛同するわけではないのだが、彼は骨の髄から北朝鮮の全体主義を敵視し、自分を妨害する者は北朝鮮と通じているようにしか映らない、という世界観の持ち主であった。
2024年8月15日に彼が打ち出した「統一ドクトリン」にもそれは色濃く反映されていた。ドクトリンのキーワードは「自由統一」で、それは韓国による北朝鮮の吸収統一に他ならない。
「南北とも同じ民族」を基盤にせず、自由民主主義で半島を統一して北朝鮮を消滅させるべし、と異例の踏み込みをした大統領とは、どういう人物なのか、野党は今一度分析すべきであった。
結局のところ、与党も野党も飽くなき権力闘争に夢中となるあまり、怨念めいた憤怒と焦燥感が尹錫悦の中で膨らんでいたことを見過ごしたのではないか。国会で弾劾が可決されたのを受けて彼が述べた談話には、このような一節がある。
「国民のために悩みながら推進してきた政策などが足を引っ張られた時は、気が焦って夜も眠れませんでした」
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