韓国・尹大統領弾劾決定「野外フェス」のあと 待ち受けるのは熾烈な権力・法廷闘争か
加えて、当時暴力沙汰が起きなかったことから、韓国の保護者たちとしても10代の娘が尹錫悦を糾弾する集会に行くことにさほど心配はないのであろう。
汝矣島に赴く前に、光化門で開かれていた保守派の弾劾反対集会も見に行ったのだが、そこでは退役軍人らが「(最大野党・「共に民主党」の代表)李在明を逮捕せよ!」と雄叫びを上げる野太い声が響き渡っていた。
規模は警察発表で4万人。ざっと見渡すと参加者たちの平均年齢は60を超えているのは確実と思われた。
おそらく全員が、前回の朴槿恵弾劾にも強硬に反対し続けたであろうコアな保守派だ。手にしているプラカードには「主思派(チュサパ)を剔抉(てっけつ)せよ」の文字。主思派とは北朝鮮がイデオロギーとして掲げてきた主体思想に従う人たちを指す。
剔抉は「えぐり出す」という意味で、ニュアンスとしては「撲滅」に近い。そうしたメッセージからもわかるように、保守派は尹大統領が12月3日に戒厳令を出した際に理由として掲げた「韓国国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に剔抉し、自由憲政秩序を守るため」という言葉に、激しく共鳴しているのだ。
ピザやマージャンの旗が翻る
話を弾劾支持派が押しかけた汝矣島に戻すと、もう1つ、前回とは変化した風景があった。やたら旗が多いのだ。戦の武将たちかと思わせるほど翻っていた。
「いかにも」という労働組合支部のものも少なくはなかったが、むしろ政治色とは無縁のコミカルな旗の方が目立っていた。「全国サンタクロース総連合会」、「ハワイアンピザ愛好会」、麻雀の牌やアニメのキャラとおぼしき少女が描かれた旗……。
くだんの女子高校生たちも「DARK MOON 吸血鬼と狼男保護協会」という旗を掲げているので、「何の旗?」と訊くと、「ああ、これ(笑)。漫画のキャラクターにちなんでなの。みんな自分たちの好きな旗を作って楽しんでるのよ」とのこと。
大統領が戒厳令を宣布し、それが内乱罪にあたるかどうかが問われている事態とは思えないほど、若者たちは屈託がない。
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