韓国・尹大統領弾劾決定「野外フェス」のあと 待ち受けるのは熾烈な権力・法廷闘争か

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もう1つ、若者らのお祭り騒ぎを私がやや冷めた目で見たのは、これから待ち受ける法廷闘争が熾烈なものになりそうな見通しであるためだ。それも、尹錫悦や、戒厳令を提案したとされる金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相らのだけではない。李在明もやはり被告の立場だ。

皮肉にも、尹錫悦に対する弾劾訴追案が提出される直前の12月12日、総選挙で躍進した進歩派野党「祖国革新党」代表で文在寅政権時代の法相だった曺国(チョ・グク)氏に対する判決が最高裁で確定した。

政界の主要人物がこのまま消え去る?

子どもの不正入学疑惑に絡んで公文書偽造などに問われたものだ。懲役2年の実刑で、彼は失職して収監されることとなり、5年間は被選挙権を失う。

李在明もすでに公職選挙法違反の罪に問われて1審で懲役1年・執行猶予2年の有罪判決が受けていて、これが最高裁で確定するとやはり5年間は被選挙権を失い、次の大統領選挙に出馬できなくなる。

彼としては、ぜひともそうなる前に大統領選が実施されて出馬したいわけだ。尹錫悦の弾劾が決まると、彼が「次は1日も早く罷免を」と訴えたのは、自分の都合も大いに含まれている。

李在明をめぐっては、控訴審の弁護士を選任せず、訴訟に関する通知も受け取ろうとしてなく、訴訟を遅延させることを狙った行為ではないかと与党議員から指摘されている。さもありなん、である。

逆に、尹錫悦が与党から辞職するよう働きかけられたのを拒み、弾劾訴追を受けて立つと表明したのも、その方が罷免されるにしても時間はかかり、その前に李在明の有罪が確定する公算が高まるのではないか、と判断したのが一因とみられている。

もしかすると、曺国に続き、李在明と尹錫悦も法廷闘争で敗れ、最近の韓国政治における主要登場人物3人が表舞台から消えることになるかもしれない。そうした今後のシナリオを考えながら、汝矣島から再び人波に揉まれながら宿まで歩いて帰った。日は暮れ、街は闇に覆われていた。

池畑 修平 ジャーナリスト、一般財団法人アジア・ユーラシア総合研究所理事

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いけはた しゅうへい / Shuhei Ikehata

1969年大阪府生まれ。1992年に東京外国語大学を卒業後、NHK入局。高松放送局、ジュネーブ支局長、中国総局(北京)、ソウル支局長、BS1「国際報道」キャスター、解説主幹などを務めた。著書に『韓国 内なる分断―葛藤する政治、疲弊する国民』がある。

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