これでいいのか待機児童対策 相次ぐ不祥事で判明した企業頼み政策の危うさ
馬車道保育園運営企業の社長は今回、本誌の取材に応じた。同氏は事業破綻の経緯を次のように話した。
「園舎ビル賃借料の支払い原資は、運営費の充当ではなく企業のほうで独自に手当てせよ、と横浜市から指導を受けた。しかし、参入時点でルールがきちんと知らされていなかったうえに、その後の市の指導にも納得がいかない点が数多くあった。ビルの改修費や賃借料の支払いで会社が火の車となり、保育事業の継続を断念せざるをえなくなった」
だがその過程で、本来認められていない、保育園会計から企業の本部会計への年度をまたがった多額の貸付金があることも判明。「別事業への流用など不正な支出はいっさいない」と社長は説明しているが、経理関係の書類の多くは残っておらず、詳細を確認するすべもなくなっている。
規制撤廃の危うさ
企業の保育事業参入にはリスクが付きまとう。これまでにも、補助金の水増し請求や外車購入などへの不正流用、突然の全園閉園などの不祥事が企業経営の保育園で発覚している。にもかかわらず、政府は企業の本格参入以外に有効な待機児童解消策はないとして、保育に関する規制の多くを撤廃しようとしている。
政府は新システムの導入に際して、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ「こども園」(仮称)の新設を促していく。その際、「他事業会計との区分経理は求めるが、繰り入れや剰余金の配当に関して、法的な規制は行わない」という案を示している(ただし一定の要件を満たす「総合施設」については別途規制を検討)。