これでいいのか待機児童対策 相次ぐ不祥事で判明した企業頼み政策の危うさ
だが、参入から4年余りで保育事業から撤退。横浜市は運営費として2園に前払いしていた金額のうち、閉園後の分1390万円余りの返還を求めているものの、回収は困難になっている。市によれば、これとは別に2園で少なくとも6600万円以上に上る運営費の使い道が判然としない状態になっているという。
民間企業が認可保育園を開設する方法としては、(1)非営利の社会福祉法人を設立する方法、(2)企業自らが参入する方法の二つがある。後者の場合でも、自治体からの運営費は原則として保育事業に支出しなければならず、株式配当に転用することは事実上不可能。また、運営費を建物の賃借料の支払いに回すことについても厳格な規制が設けられている。
このようなルールがあるのは、運営費は原則として子どもの保育に使用すべきものとされているためだ。利益捻出の目的で職員の賃金や遊具、給食などへの支出を削ることになった場合、保育の質に悪影響を与えるおそれがあるとの考えに基づく。そのため、営利目的での認可保育園運営は容易ではない。
にもかかわらず、待機児童対策を目的に企業立の認可保育園の誘致を積極的に進めてきたのが横浜市だ。公立保育園の廃止および社会福祉法人への譲渡が年間4園のペースで進められる一方、横浜市では11年4月現在、市内459カ所の認可保育園のうち、88カ所が企業立になっている。市は企業を誘致するために、保育園の賃借料や内装工事費の一部を補助する仕組みも設けている。
しかし、十分な財務基盤を持たず、運営能力が乏しい企業にも保育園開設を認めたことが裏目に出た。「馬車道保育園を運営していた企業の破綻がその象徴だ」と、事件の解明に取り組んできた白井まさ子・横浜市会議員(共産党)は指摘する。