指示出さない「イタリア人の上司」から得た気づき コーチング理論に裏打ちされた「綿密な計算」
たとえば、新聞などのメディアに出てくるレベルの製造業の用語ならまだしも、実務の最先端の用語が飛び交うと、社内オフィスや製造現場で社員が何を話しているのかよくわからない状態だったのです。
私が推進する部門横断型(クロスファンクション)のプロジェクトチームの会議では、最初の数週間は議論がうまくかみ合わず、残業が続く毎日でした。参加メンバーはそれぞれ能力にばらつきがあり、会議では発言が偏り、特定のメンバーが主導し、ほかのメンバーは受け身になってしまうという状況に陥りました。
さらに、会議で約束した期日にデータや資料を準備できないメンバーも多く、会議の進行に支障をきたしていました。月に1度の経営会議で発表する資料を作成する際も、ストーリー性が乏しく、事業計画をまとめるのに苦労しました。
このままでは事業計画がまとまらないと感じた私は、入社早々にプロジェクトの進め方の再考を余儀なくされました。「プロジェクトを立ち上げるという重責を果たすためにはどうすればいいか」を考え、私はファシリテーションを通じて、部下や他部門の人たちの専門的な知識や経験を最大限にいかすことを目指しました。
私には社内の専門的知識を身につけてから動き出す時間の猶予はなかったのです。
「質問の投げかけ」で活性化する会議
まず私が主催する会議でファシリテーターとして、毎回の会議のゴールを明確にしました。たとえば、「この会議では、競合企業に対して、うちが差別化して優位性につながる要素をまずは整理しましょう。そのうえで事業構想に組み込むにはどうすればいいか議論しましょう」といった具合です。
そして参加者にさまざまな質問を投げかけていきました。これによって、参加者がそれぞれの知見をもとに議論が活性化しました。
これであれば、私がキャッチアップしきれていない用語が出てきても、プロジェクトにおける重要なポイントについては議論できます。新規事業として議論すべきポイントとそのための質問は、専門知識に必ずしも依存しないからです。
そして会議で重要なのは議論が盛り上がることだけではなく、議論が「アクション」として共有され、参加者それぞれが実行して価値を発揮することです。
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