「京急」「京成」に照準定めた旧村上ファンドの思惑 2006年の「阪急・阪神合併」の再現を想起

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「招かざる客」の突然の来訪を2社はどう受け止めているのか。

「『品川』は焦っている」と、前出の市場関係者は話す。「品川」とは品川駅を起点とする京急のことだ。

「旧村上ファンド系はあれこれと要求してくるはず。『経営統合しろ』『配当を増やせ』『自己株買いしろ』『不動産を売れ』とふっかけるのが得意。最後はドロドロの論争になって、そこで株価が上がれば、イグジットしていく」(同)

こういった「剛腕」を知っているからこそ焦り、京急は警戒感を強めているという。

緊迫化への懸念は京成のほう

事態が緊迫化する懸念があるのは京成のほうだ。同社にはすでに「物言う投資ファンド」が大株主にいる。1.97%の株を持つパリサー・キャピタル(イギリス)だ。今年6月の定時株主総会で、パリサーがOLC株の一部売却を求める株主提案を出したことは記憶に新しい。

提案は否決となったとはいえ、京成の姿勢を不安視する声が聞こえてくる。「京成はその後も何か抜本的な資本政策を打ち出しているわけではない。外部から見ていても対策が不十分で『どうにかしないのか』と思ってしまう」。大手私鉄の関係者はそう語る。

旧村上ファンド系がほかのファンドと共闘するケースはほぼないが、今回に限っては「パリサーとの連携も考えられる」(別の市場関係者)。

京成は10月に、ともに千葉県に本社を構えるイオンと資本業務提携をすると発表した。イオンの出資比率は2.3%程度となる。

アクティビストに対するホワイトナイトのようにも映るが、「この資本提携とパリサーの件とは関係がない」(京成電鉄の広報担当者)。あくまで、「新津田沼駅周辺の再整備を共同で行うなど、街づくりの面などで長期的な関係を築いていく」(同)とする。

市場関係者も「イオンはただの『ご近所さん』。有利子負債が多く、今後の金利高局面で利息支払い負担も増えてくるだろうから、ホワイトナイトに躍り出ることはない」と喝破する。

2006年以来となる鉄道業界のビッグバンにつながるのか。それとも京急と京成は冷静に対応し、切り抜けるのか。波乱含みの様相だ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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