「骨を強めるにはカルシウム」の常識が変わった訳 メカニズムの解明で医学のガイドラインも改訂された
コンクリート=カルシウムなど=骨密度(骨量)
鉄筋=コラーゲン=骨質
という関係性です。骨の強さは、カルシウムだけでなく、コラーゲンが影響しているのです。
人の骨密度は、生まれてから20歳くらいにかけて一気に上がり、40~50歳くらいから低下します。結果として、10代の子どもの骨密度と80代の高齢者の骨密度は同じ程度です。ですが、骨折するときの「折れ方」はまったく違ったものになります。
子ども特有の骨折に「若木骨折」というものがあります。その名の通り、骨が若木のようにしなりながら曲がってしまいます。ポキッとはいかない折れ方です。
かつてのガイドラインとは隔世の感
子どもの腕や足などの細く長い骨(特に腕の骨)に生じやすく、強く手をついて転倒するなど、細く長い骨の縦方向に力が加わることによって起こります。若木骨折は、基本的に大人がなることはありません。
同じ骨密度であっても、高齢の方の場合、ポキッと硬くてもろい骨折になるのは、コラーゲンが劣化し、骨質が低下していると、強度は保てないということの証と言えるでしょう。
「骨を強くするにはカルシウムで骨量を増やすだけでなくコラーゲンの質を高めて骨質を高めることが必要だ」ということを発見したのは私たち慈恵医大のチームです。
1993年にWHOが示した骨粗しょう症の定義には、「骨の強さは骨密度で決まる、だからカルシウムが大事」とあり、当然ながら骨質のこともコラーゲンのことも書かれていません。
コラーゲンの重要性など、「骨質」が骨の強さにかかわるメカニズムが解明されたことで、世界の骨の常識はがらりと変わり、骨粗しょう症のガイドラインも改訂され、治療も大きく前進することになりました。
かつてのガイドラインと現在とでは、まさに隔世の感がありますが、私たちはその後も、骨の常識を塗り替える発見や発明を積み重ねています。
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