香港「巨大詐欺事件」詐欺師と捜査官の熾烈な戦い トニー・レオンとアンディ・ラウが共演で話題

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だがくしくも時は1982年。英国のサッチャー首相が訪中し、鄧小平主席と香港返還について英中交渉を開始した結果、香港経済の将来への不安が市場に広がり株価は大暴落。そこから彼の歯車は少しずつ狂いはじめる――。

一方、汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユン(アンディ・ラウ)は、チンの陰謀に目をつけ、逮捕にこぎつけようと捜査を進めるも、巨額の資金力と、強力な弁護士を有するチンを捕らえるには至らず、苦渋の日々を過ごしていた。

それでも彼はあきらめることなく、粘り強く捜査を続けてきた。だが裏社会におけるチンの存在感は日に日に大きくなっていき、やがて家族が危険にさらされることに――。

トニー・レオンの怪演は必見

本作は、いち企業が汚職、不正会計、詐欺、果ては殺人などを行った香港史上最大級の企業犯罪といわれる1983年の「佳寧案(キャリアン事件)」をモデルとしているが、そのグループのボスを演じたトニー・レオンの怪演は強烈な印象を残す。

彼自身、「あれほど派手で破天荒な人物を今まで演じたことがなかったからチャレンジだった」と語るほどにクセの強い人物となるが、そんな人物を嬉々として演じており、第42回香港電影金像奨の主演男優賞を受賞したのも納得の存在感だ。そしてそれを静かな演技でしっかりと受け止めるアンディ・ラウとの対比も面白い。

ゴールドフィンガー 香港
物語の設定上、互いの存在を知らない状態だった【インファナル・アフェア】に比べ、本作ではふたりの芝居のやり取りもより多く披露している。©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved

トニー・レオン演じるチン率いる嘉文世紀グループの最盛期は、まさに香港のバブル絶頂期と重なる。本作の総製作費は70億円超えともいわれているが、その熱狂と狂乱ぶりを完全再現した映像は必見。

ゴージャスで派手な美術、ファッションなどはもちろんのこと、今となっては失われてしまった60年代から90年代にかけての香港の風景を再現したVFXなども非常に見応えがある。

なお、こちらは余談だが、現在の証券取引所は電子化されているが、この当時は手書きで株価を記入している。そんな時代の空気を感じさせるマネーゲームの描写も興味深い。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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