1993年生まれ香港育ち、消えゆく香港の姿を記録 『わたしの香港』カレン・チャン氏に聞く

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『わたしの香港』著者のカレン・チャン氏
カレン・チャン(Karen Cheung)/ジャーナリスト。1993年中国深圳に生まれ、香港で育つ。香港大学で法学とジャーナリズムを専攻。卒業後は、編集者・ジャーナリストとして活動する。香港のデモやカルチャーシーンを取材し、国内外に向けて執筆。本書がデビュー作。(撮影:梅谷秀司)
英国統治を経て、1997年に中国に返還された香港。国際的な経済都市というイメージで知られるが、近年は中国政府の政治的圧力の強化とそれに対する抗議運動で世界の耳目を集めた。
香港の姿はじわじわ変わっている。93年に生まれ香港で育った著者は半生を振り返りながら香港の記録を1冊の本に残そうと試みた。

自分の知っている香港を書きたい

わたしの香港 消滅の瀬戸際で (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅣ)
『わたしの香港 消滅の瀬戸際で (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズⅣ)』(カレン・チャン 著/古屋美登里 訳/亜紀書房/2750円/416ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──単に香港を解説する本ではなく、私立校から公立校に移ったことや家族関係の悩み、政治的なトラウマやうつ病など、チャンさんの経験を通して香港の存在や社会を伝えています。

現代の香港の姿を記録したいと思ったからだ。香港は経済的に非常にペースが速い資本主義都市で、物事も街並みもどんどん変わっていく。そして中国返還から50年後、一国二制度が終わる2047年には、より急速に変化することが予想された。だから私は、子どもの頃から記憶や物事を忘れないために日記を書いていた。

それは公的なものでも政治的なものでもないが、大人になるにつれ、自分自身だけでなく香港という都市に関わる日記だと思うようになった。私が育った時代の香港には、そこにあるのが当たり前だと思っていたものがすべてあった。例えば、さまざまな新聞を読めて、各学校が生徒たちに何を教えるか決めることができ、抗議をするという文化も存在した。

次ページ日本語には翻訳されたが、中国語には訳されていない
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