羽生結弦が見せた「被災地支援」への熱いこだわり 関係者が語るチャリティー演技会の舞台裏

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演技会では能登とスケートリンクの様子を相互に中継でつなぎ、地元の太鼓チーム「輪島・和太鼓虎之介」の演奏と、「能登高校書道部」の書道パフォーマンスも披露された。地域の若い世代のエネルギー、演者同士の温かい交流は、この演技会の意義を改めて視聴者に訴えかけるものだった。

社員数約80人のテレビ金沢にとって今回の演技会は一大イベントで、半数以上の社員が何らかの形で関わることになった。「演技会は私たちにとっても挑戦でした。この経験を通じて、テレビ金沢も大きく成長できたように思います」(佐藤氏)。

さらにテレビ金沢の提案から、石川県による観光促進プロジェクトに羽生が協力することも決まっているという。

生き残った者の使命

今年6月、羽生は演技会に先立ち、自身がスペシャルメッセンジャーを務める日本テレビ「news every.」の企画で輪島を訪れた。これも羽生の希望だった。長年、被災地支援に伴走してきた「news every.」取材班は、「東日本大震災を仙台で経験した羽生さんは、生き残った者の使命として、被災地の現実や防災の重要性を伝えていかなければ、と考えているように見えます」と言う。

ソチ五輪後、津波の被災地である石巻を訪問した際の出来事が被災地訪問の原体験となったようだ。遠慮がちに訪ねた羽生を、町は熱く歓迎した。訪問先の学校だけでなく、道ゆく人が「オリンピック頑張ったね」「羽生くん、応援してるよ」と声をかける。

人の温かさに触れると同時に、自身の金メダルが被災地に笑顔をもたらすきっかけになると実感する経験になった。それ以降羽生からは、「福島に行きたいです」「北海道胆振(いぶり)東部地震の被災地へ」と取材班への積極的な提案が行われてきたという。

「忙しい中でも、被災地支援につながることにはきっちり時間をつくってきている。災害からの復興や防災に関することは羽生さんにとって、もう1つのライフワークなのだと思います」(同取材班)

「羽生結弦」を冠したイベントも災害被災地の力となっている。読売新聞社主催の「羽生結弦展」では、これまで3回の開催でグッズ収益から約1億5652万円の寄付が行われた。寄付の一部は「大規模災害支援基金」として積み立てられ、被災自治体などへの支援金の原資になっている。現在の残金は約6593万円だという。

=一部敬称略=

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

2008年早稲田大学商学部卒業、東洋経済新報社入社。データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーション、育休を経て、2020年4月『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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