北京世界陸上「日本惨敗」の責任問題を考える このままでは2020年東京五輪も危うい

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陸上競技は個人種目だからという理由もあるが、メディアも陸上ファンも、“スケープゴート”にできる存在を見つけられないというのが大きいと思う。

たとえば、サッカーの日本代表なら、まずは監督が真っ先に批判を受ける。その矛先は戦術、選手選考、起用法など多岐にわたる。次に活躍を期待された選手たちの中で、精細を欠いたプレーをした選手だ。それから、ダメ監督を招聘したサッカー協会という感じではないだろうか。

サッカー熱が高い国の代表チームほど、人気のあるクラブチームほど、メディアやファンの批判は大きくなる。外部から厳しい意見があるからこそ、内部の人間たちはさらに必死になる。だが、今の日本陸上界は、関係者からメディアやファンへの声はほぼ“一方通行”だ。外部からの意見は多くなく、その声もほとんど届いていない。

北京で感じた“絶望感”の正体

今大会、日本勢は最初の種目で大きくつまずいた。それは日本人にとって人気の高い男子マラソンだ。まずは最も入賞の期待が高かった今井正人(トヨタ自動車九州)が髄膜炎を発症。欠場を余儀なくされた。エースを欠いた日本勢は、藤原正和(Honda)と前田和浩(九電工)が出場するも、ふたりとも中間点を前に後退。藤原は2時間21分06秒で21位、前田は2時間32分49秒で40位に沈んだ。

藤原と前田はともに34歳。2年前のモスクワ世界選手権に続く世界陸上代表で、前回は藤原が14位、前田が17位だったので、ともに順位を落としたことになる。そして、レース後に藤原が発したコメントに筆者は絶望した。

「何が足りなかったのか?」という記者の質問に対して、「現時点では何とも言えません。これから今までのことを総括して、何がダメだったのか考えたい」と話したからだ。正直、聞きたくない言葉だった。初めて世界大会に出場する20代前半の選手が言うなら理解できる。3度の世界選手権代表のキャリアがある34歳の選手が「わからない」のであれば、誰にわかるだろう。

だからといって、藤原が悪いとは思わない。彼は自分の中で、対策を練り、やるべきことをやってきたからだ。「ここまではいい練習ができていました。うまくピークも合わせられましたし、落ち着いてスタートラインに立つことができたんです」(藤原)と仕上がりは順調だった。ペースメーカーのいない世界大会では、スローペースになっても、ペースの上げ下げが頻繁に起こる。藤原は微妙なスピードチェンジに対応できるような練習もしてきたという。そして、「前回のように集団の後ろで行って、インターバルのような形になるよりは、多少揺さぶりがあっても前方でついていった方が楽だったので、前半はいい走りができたと思います」と集団の中での走りは前回の反省を生かしていた。しかし、「20㎞過ぎにカラダ全体が動かなくなった」と失速した。

前田も直前の状態は悪くなかったというが、19㎞過ぎに脚がつりはじめた。太腿前部、ハムストリングス、ふくらはぎ。けいれんは両脚全体に広がり、ペースを落としてゴールを目指すしかなかった。「こんな状態になったのは初めてです。給水もしっかり摂っていたので、暑さの影響ではないと思います。ただ、後半に糖質を摂ったとき、脚の状態も一時的には元に戻ったので、脱水症状だったのかもしれません」と前田は話していた。

スタート時の気温は22度、湿度は73%。徐々に気温が上昇したとはいえ、想定内の暑さだったにもかかわらず、日本勢は自滅した。しかも、その原因はハッキリしていない。8大会連続で「入賞」を続けてきた男子マラソンの“粘り強さ”は少しも見られなかった。

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