現代人がこれほどボードゲームに熱中する深い訳 ゲームマーケット開催直前、改めて魅力に迫る
與那覇 ボードゲームについて「どこがそんなにいいの。デジタルじゃダメなの?」と聞かれた際、ぼくは「自然に『メタゲーム』が生まれる点がいい」と答えます。対面でテーブルを囲んでプレイすると、自分がそのゲームで勝ちたいと思うのと同時に、「同席しているみんなにも、自分と同じくらい楽しんでほしい」というミッション意識が湧きますよね。これが、プレイするボードゲーム自体よりもひとまわり大きい「メタゲーム」ではないかと思うのです。
これはコロナ禍で一時的に流行した「Zoom飲み会」が結局、対面での飲み会ほど定着しなかった理由とも似ています。パソコンの前で缶ビールを開ける形の飲み会には、確かに遠隔地の人とも楽しめる利点がありました。しかしコロナが終わった後も習慣として続けている人は、ほぼ見ません。
小野 まさにこの対談自体、一部は山形と東京をつなぐZoomで収録していますが、メインパートは「ゲームマーケット」のために私が上京する機会を活かして、対面形式で行っています。やはり「同じ場所」を共有しない形でのコミュニケーションには、無理があるんですよ。
「目的がない」のは楽しい
與那覇 遠隔でのオンラインゲームの対戦だと、互いに顔が見えないから「相手は楽しめているのかな?」とは想像せず、自分が勝つことだけに集中しがちです。しかしテーブルを囲んでボードゲームをしている際に、隣の人はどうもルールが吞み込めてないとわかった時、「よし。こいつの理解不足につけ込んで、俺が圧勝しよう!」とは普通思わない。
むしろ「ちょっと難しい?」のように声をかけて教えあったりして、全員が同じように楽しみたいという気持ちが自然に湧きます。結果として、ゲームの上ではむしろ負けてしまったとしても、「みんなでいいプレイができたな」とする満足感の方が勝るからです。